最新記事

海外ノンフィクションの世界

人類史上最も残虐な処刑は「首吊り、内臓えぐり、仕上げに八つ裂き」

2018年2月28日(水)16時00分
森本美樹 ※編集・企画:トランネット

数々の処刑方法を載せた『処刑の文化史』の中で、「有史以来生み出された処刑のうち、間違いなく最も恐ろしい処刑方法」と形容されている「首吊り、内臓えぐり、仕上げに八つ裂き」

<公開処刑はより良い社会を築くために行われた――。230点以上に及ぶ挿絵、絵画、写真が掲載された『処刑の文化史』は、人間の恐るべき本性を浮き彫りにする>

人間はかくも残酷になれるのか。古代から現代にかけて人間が考え出し、工夫を凝らしてきた残虐極まりない処刑の数々――。

思わず目をそらしてしまうような挿絵、絵画、写真が満載の本書『処刑の文化史』(ジョナサン・J・ムーア著、筆者訳、ブックマン社)が完成したのを見て、昨年末、東京・上野で大盛況のうちに会期終了した「怖い絵」展を思い出した。人間は本来、残虐なものに惹きつけられてしまうものなのか。

そもそも公開処刑は社会秩序を維持し、より良い社会を築くための見せしめという刑法思想に基づいて行われた。オーストラリアの先住民社会では、部族のルールを破った者に与えられる最も厳しい刑は一族を集めた面前で行われる槍刺しであったし、古代ローマの処刑は、円形闘技場を使用して大々的なショーとして行われた。

また18世紀のロンドンでは、海賊行為などの海に関わる犯罪に携わった者は絞首刑にしたあと引き潮の海にそのまま放置され、その後満潮が3回繰り返すあいだ水夫たちへの恐怖の見せしめとされたという。

ロンドンではまた、法を犯した者は首を切り落とされ、その首は最も人々の目につきやすいロンドン橋の水門小屋の上や市内のテンプル門の上などに串刺しにされて並べられた。典型的な見せしめ行為だ。

見せしめの効果を増すために、処刑の形はおのずとその残虐性を増していく。一気にとどめを刺すことをせずに受刑者の苦痛を長引かせて見せつけるという発想だ。

アケメネス朝のペルシャ人はこの点に工夫を凝らした。囚人の命を奪うことなく、順番にまずは目玉をくりぬき、舌を抜き、耳を切り落とし、苦痛で囚人の感覚が麻痺してしまう前に手足を切断し、そのうえで体を串刺しにした。念が入ったことに、この段階に至っても串が内臓を貫通して囚人を絶命させてしまわないようにして、苦痛の時間を引き伸ばした。

火あぶり刑にしても、火がゆっくりとくすぶれば受刑者の苦痛は長く続くのだ。そのため重罪の囚人ほど時間をかけてあぶり焼きにする工夫がされた。逆に囚人に一縷の慈悲をかけるならば、囚人の股の付け根や脇の下に火薬袋を巻き付けて一気に焼死させてやるのだった。

trannet180228-2b.png

第5章は全て「火あぶり」(『処刑の文化史』より)

ギロチンは「人道的」、ガス室は「健全」

受刑者の苦痛を最大限に引き伸ばす人類史上最も残虐な処刑は、本書の原題でもある「首吊り、内臓えぐり、仕上げは八つ裂き」(Hang, Drawn, and Quartered)の刑だろう。初めに囚人の首を吊る。そして絶命直前に首縄を外し、囚人の意識が戻ったところで腹を裂いて内臓をえぐり出す。最後に生きながらにして八つ裂きにする。

ここまでの猟奇的とも言える残虐行為を思いつき、処刑として実行する人間の恐るべき本性。人間は究極的にいったい何を求めているのだろうか。

フランス革命末期の恐怖政治の時代に多用され、同時代パリだけでも2500人以上の処刑に使用されたギロチンは、その視覚的な残虐性に反し、実は人道的な処刑装置として開発されたものである。

受刑者の苦痛を長引かせることなく、刃の落下で一息に受刑者の首を切断し絶命させるという点で、確かに故意に受刑者の苦痛を長引かせる処刑より人道的であるかもしれない。

trannet180228-3b.png

1789年にフランスで考案されたギロチン。「当初、斬首刑は貴族のみに行われていたが、画期的で完成度の高いギロチンの登場で、社会的階級にかかわらず、すべての死刑囚に斬首刑を執行できるようになった」とのこと(『処刑の文化史』より)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

韓国中銀総裁、ウォン安を懸念「経済ファンダメンタル

ワールド

中国百度のAI半導体部門、香港上場を申請

ワールド

金正恩氏娘が宮殿初訪問、両親の間に立つ写真 後継ア

ワールド

韓国大統領が4日訪中、両国関係の「新たな章」期待 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    【現地発レポート】米株市場は「個人投資家の黄金時…
  • 8
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 9
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中