最新記事

トレーニング

ジム通いもプロテインも不要な「塀の中の筋トレ法」が日本上陸

2017年8月25日(金)11時52分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

写真はイメージです。 Spanic-iStock.

<刑務所に20年以上いた男が書いた筋トレ本『プリズナートレーニング』。「キャリステニクス(自重トレーニング)」を推奨し、相当マニアックでハードな内容に思えるが、初心者にも入りやすい、意外と優しい構成となっている>

ジムに通って体を鍛えることがブームになっている。体型を維持するだけでなく、前向きなメンタルを保てるということで、会社経営者の中にも筋トレに励む人が少なくない。

一方で、ジムに入会したはいいものの、多忙さにかまけたり、トレーニングの過酷さや退屈さに耐えられなかったりして、次第に足が遠のいてしまった人もいるはず。安くない会費を払っているのに通っていない人たちは、ジムにとってむしろ「優良顧客」と言えるかもしれない。

いずれの人にとっても、全米ベストセラーになったという筋トレ本『プリズナートレーニング』(ポール・ウェイド著、山田雅久訳、CCCメディアハウス)はショッキングな内容だろう。本書は、ジム通い、器具を使ったウェイトトレーニングを明確に否定。それだけでなく、プロテインやトレーニング用サプリメント、ステロイド(筋肉増強剤)も、筋肉を付けるためには不要だと言い切っている。

著者はこう喝破する。


メディアと一般大衆にとって、強く健康的な人の典型といえば、ジムにいる、ふくらんだ体を誇示しながらポーズを取る人たちを指している。究極の強い体の持ち主、それはボディービルダーだ。いまはそう考えられている。わたしには、この現実が狂気のように思える。(19ページより)

本書には「キャリステニクス(Calisthenics)」なる、聞き慣れない単語が頻出する。


キャリステニクスをマスターするには、男女の別なく、体をジムにすればいいだけだ。ほとんどのエクササイズが器具なしでできるからだ。(44ページより)

「なんだ、自重トレーニングのことか」と、軽く納得した人もいるだろう。本書の定義によれば「自分の体重を使い、体を極限まで開発する技術」だが、日本では「自重トレーニング」と言われることが多い。確かに自重トレーニングについては、既にさまざまなノウハウが世に出ている。

ただし、本書の書名は『プリズナートレーニング――圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ』である。著者のポール・ウェイドは、刑務所で20年以上の服役歴がある元懲役囚だ。

同房の屈強な囚人たちは、弱い者を脅迫で従わせることに躊躇がない。自分が脅迫のターゲットにならないよう、著者は早急に強くなる必要があった。しかし、当然ながら檻の中にダンベルはないし、ベンチプレスもできない。つまり、自分の身を守る手段は、キャリステニクス「一択」しかなかった。

彼は男としての屈辱を回避し、誇りを失わず生きるために、自らの体躯を鍛えあげたのだ。ごまかしや逃げ場、言い訳、商業主義の入り込む余地がない、実にプリミティヴなトレーニング方法と言えよう。

実際、キャリステニクスは昨日や今日誕生したトレーニング方法ではない。


古い時代の男たちは、持久力トレーニングとしてではなく、なによりも筋力トレーニングとしてキャリステニクスをとらえてきた。比類なき兵士が最大限の戦闘能力と威圧的な筋肉を発達させるために使ったのもこれだ。(29ページ)

古代ギリシャのスパルタ人たちのような桁外れの怪力すらも、自重だけで十分に身につけられる――そういう理屈だ。

【参考記事】運動は週末だけでOK、健康効果は毎日の運動と遜色なし

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スターバックス、中国事業経営権を博裕資本に売却へ 

ワールド

クック理事、FRBで働くことは「生涯の栄誉」 職務

ワールド

OPECプラス有志国の増産停止、ロシア働きかけでサ

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRB12月の追加利下げに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中