最新記事

映画

「史上最高に美しい3D映画になったよ」

ちょっとねじれて愛らしい『天才スピヴェット』のジャンピエール・ジュネ監督に聞く

2014年11月19日(水)17時26分
大橋希

天才少年の世界 家出をしたスピヴェットの冒険の結末は © EPITHETE FILMS - TAPIOCA FILMS - FILMARTO - GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA

『デリカテッセン』『アメリ』など、独特の世界観と映像で人々を魅了してきたジャンピエール・ジュネ監督の最新作『天才スピヴェット』が日本公開中だ。ジュネにとって初の3D作品でもある。

米モンタナ州の牧場で暮らすT・S・スピヴェットは生まれながらの天才少年だが、それぞれ個性的な家族からは今ひとつ理解してもらえない。ある日、由緒ある科学賞を受賞したという知らせを受けたスピヴェットは、ワシントンでの授賞式に向かうべく家出を決意する。双子の弟の死後、ばらばらになった家族を残して──。

 原作はライフ・ラーセンの『T・S・スピヴェット君 傑作集』。ただの小説ではなく、欄外に書き込まれた膨大な図版やイラスト、文章に驚かされる仕掛けだ。ジュネ監督はこれを読んで、すぐに3Dでの映画化を思い立ったという。

脚本から衣装、美術や音楽、撮影技術まで、映画作りのすべてが楽しいというジュネに話を聞いた。

──自然の光景も、飛び出す絵本のような仕掛けも、とにかく3Dの映像が非常に美しい。

 僕は空想とか、視覚的なイメージを大事にしている。お気に入りの映画監督はティム・バートンやデービッド・リンチ、フェリーニなど映像美に優れ、強い視覚的イメージで世界をとらえる人たちだ。

『デリカテッセン』『アメリ』『ミックマック』といった僕のこれまでの作品は、どれも3Dで撮ることができたと思う。ただ3D作品は時間も手間もかかるし大変なんだ。例えばアメリカの映画会社なんかは2Dで撮影したものを3Dに変換する形を取って、3Dのよさを殺しているところもある。

でも『天才スピヴェット』は史上最高の、最も美しい3D映画になったと思うよ! 撮影のための事前調査をしっかりしたし、3Dカメラを使って撮った。さらに編集段階でも、細かい部分の調整にすごく時間を掛けたからね。

僕は9歳で劇の脚本を書いて、それから「ビューマスター」というおもちゃでよく遊んだ。写真を3Dのように立体的に見るもので、写真の順番を変えて楽しんでいた。その後は、友達の会話を録音するレコーダーを買った。考えてみれば、これは映画作りのステップと同じ。ただ当時の自分は何かを作るのが楽しいだけで、そのことには気付いていなかったが。

──「スピヴェットは僕だ」とあなたは言っているが、どんなところが?

 彼と同じで、僕もスケッチをするのが大好きだ。スピヴェットのような科学的発明とは違うけど。でも映画って、詩と科学の間にあるものだろう。映画を取るには技術的な知識がないといけないし、詩も上手でなくてはならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

円債2300億円積み増しへ、金利上昇で年度5550

ビジネス

英、「影の船団」対策でロ石油大手2社に制裁 中印企

ビジネス

TSMC、通期見通し上方修正 第3四半期39%増益

ビジネス

8月第3次産業活動指数は2カ月ぶり低下、基調判断据
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇跡の成長をもたらしたフレキシキュリティーとは
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中