最新記事

メンタルヘルス

心配しても92%は意味がない。欧米で注目「考えすぎ」問題への対処法とは

2022年8月19日(金)19時55分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
考えすぎの人

Khosrork-iStock.

<日本の「繊細さん/HSP」のように、欧米で認知が進む「考えすぎ」の問題。心身の健康に及ぼす影響も大きいが、その原因となる「思考ウイルス」を見つけ出し、健康的に考えることは訓練次第で可能だ>

前の仕事を辞めるべきじゃなかった、リストラに遭って家のローンを払えなくなったらどうしよう......。考えても仕方のないことをついつい考えてしまう「考えすぎ」という状態に、気がつくと追い込まれていることはないだろうか。

ネット上でもさまざまな情報が飛び交うなかで、その状態に陥るのは当然のことかもしれない。「考えすぎ」強要社会とも言える現代を生き抜くのは至難の技だ。

このような気分や不安な状態に対する最先端の治療法として知られる認知行動療法(CBT)を利用し、あらゆる心配や落ち込みを手放す考え方と方法をまとめた書籍『考えすぎてしまうあなたへ』(CCCメディアハウス)が発売された。

著者のグウェンドリン・スミスは、気分障害や不安障害を専門とするニュージーランドの臨床心理学者だ。認知行動療法を用いた「考えすぎ」への対処法をブログで紹介したところ、世界中で話題になった。

そもそも、「考えすぎ」とは、どういう状況を言うのか。著者が最もしっくりきた定義が以下だ。


「考えすぎる」(動詞)
役立つというよりは害になるような方法で、何かについて考えたり分析したりすることに、あまりにも多くの時間を費やすこと。
(Merriam-Webster online dictionary)

欧米ではここ数年、この「考えすぎ(overthinking)」が話題となっている。日本でも近年「繊細さん」という言葉が浸透するとともに「HSP(Highly Sensitive Person)」についての認知が進んだが、「考えすぎ」も同様に、現象に名前がつくことでその存在が浮き彫りになった問題と言えるだろう。

では、この「害になるような」考えすぎ問題に、どのように向き合い、どう対処すればいいのか。認知行動療法の理論に基づきながらも、平易な文章で分かりやすく書かれた本書のエッセンスを紹介する。

ポジティブな考えすぎとネガティブな考えすぎの違い

まず、大切なのが、すべての「考えすぎ」が有害なのではないということ。

我を忘れるほど集中して考えたり、没頭できる状態に幸せを感じられることもある。例えば、結婚式を前に、ヘアスタイルやドレス、式次第について一日中考えていれば多幸感に包まれているだろう。

著者が「ポジティブな考えすぎ」と名付けるこの状況では、ドーパミンやオキシトシン、セロトニン、エンドルフィンなど、いわゆる幸せホルモンと呼ばれる神経伝達物質が活性化している。

しかし次のように考えているとしたら、事情は変わってくる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、新START延長巡り米の回答待ち=外相

ワールド

情報BOX:中国、軍事演習で台湾威圧 過去の海峡危

ワールド

米、イスラエル向けF15戦闘機の契約発表 86億ド

ワールド

トランプ氏「台湾情勢懸念せず」、中国主席との関係ア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中