最新記事

働き方

若者の現在と10年後の未来:働き方編(前編)──勤務先への忠誠よりキャリア重視、「働き方改革」の課題とは

2020年6月5日(金)14時50分
久我 尚子(ニッセイ基礎研究所)

職場環境の改善余地はまだ大きい recep-bg-iStock.

<新型コロナ危機でテレワークなどの「働き方改革」が期せずして急加速。働き方に対する若者の意識や価値観はどう変わっていくのか。独自調査から探った>

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2020年4月20日付)からの転載です。
「若者の現在と10年後の未来:働き方編(後編)」はこちら

はじめに──「働き方改革」、新型コロナの影響で業種の垣根を超えて加速度的に波及


4月8日に政府の新型コロナウィルス感染症対策本部が東京や埼玉、大阪などの7都府県へ向けて緊急事態宣言を発令したことで、今、企業では在宅勤務への切り替えなどの対応が急速に進んでいる。

テレワークやサテライトオフィスなどの柔軟な就労環境の整備は、これまでも「働き方改革」で取り組まれてきたものだ。IT関連業種など「働き方改革」が比較的進んでいた企業では、すでに2月下旬頃から本社機能を全面的にテレワークへと舵を切る動きが出ているが、ここにきて業種の垣根を超えて加速度的に進めざるを得なくなっている。

若者の現在と10年後の未来:消費行動編」では、若者の消費行動や価値観の実態を捉えた。近年、生じていた「消費のデジタル化」をはじめとした変化は、新型コロナの影響で、予期せずして加速していると述べたが、働き方においても同様の状況が進んでいるだろう。

本稿では、あらためて、若者の働き方についての価値観や現在の職場環境の実態について捉えるとともに、若者が予想する10年後、すなわち2030年の未来の状況についても見ていく。分析には、前稿と同様、ニッセイ基礎研究所が2020年3月に生活者約6千名を対象に実施した「暮らしに関する調査1」を用いる。また、若者の定義も同様に20~34歳の未婚者とする。

働き方についての価値観──若者は自分の「キャリア重視」志向が高く、「勤務先忠誠」志向が弱い


はじめに、20~50歳代全体で、働き方についての価値観にはどのようなものがあるのかを捉えた上で、若者の特徴を見ていきたい。

調査では、働き方に関わる30の項目をあげ、それぞれどの程度あてはまるか、「あてはまる」「ややあてはまる」「どちらともいえない」「あまりあてはまらない」「あてはまらない」の5段階の選択肢を用意した。得られたデータに因子分析を行い、働き方についての価値観の要因を分析した(図表1)。

図表1より、20~50歳代全体では、働き方についての価値観は『業績重視』『キャリア重視』『割り切り』『(転勤にも)家族帯同』『勤務先忠誠』『生涯就労』『やりがい重視』の7つの志向に要約される。

Nissei_career1.jpg

各因子を構成する変数から、『業績重視』志向は、性別や年齢によらず、能力や成果に応じて評価されるべき、また、女性だけでなく男性も育児休業等を取るべきという意味合いを持つ。また、『キャリア重視』志向はキャリアップのためなら転職や海外赴任も厭わない、『割り切り』志向は仕事はお金を稼ぐ手段に過ぎない・できればあまり働きたくない、『家族帯同』志向は転勤の際は家族も一緒に行くべき、『勤務先忠誠』志向はできれば同じ会社でずっと働きたい、『生涯就労』志向は高齢期も含めて少しでも働ていたい、『やりがい重視』志向はお金よりもやりがいを重視するという意味合いを持つ。

――――――――――
1 ニッセイ基礎研究所「暮らしに関する調査」、調査時期は2020年3月、調査対象は全国に住む20~59 歳の男女、インターネット調査、株式会社マクロミルのモニターを利用、有効回答6,183、うち本稿の分析対象である35歳未満の若者は1,382(男性784、女性598)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB現行策で物価目標達成可能、労働市場が主要懸念

ワールド

トルコ大統領、プーチン氏に限定停戦案示唆 エネ施設

ワールド

EU、来年7月から少額小包に関税3ユーロ賦課 中国

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、「引き締め的な政策」望む
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中