最新記事

脳科学

時間を守れないのは性格のせいではなく、脳を仕向ける「技術」を知らないだけ

2020年5月1日(金)11時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

時間把握能力を高め、時間を守れる脳になる2つの方法

菅原氏は本書で、時間を守れない脳から守れる脳になるように、脳の働きを変える方法を2つ挙げている。

まずは、時間を把握する力を鍛える方法だ。脳の中では、自分が活用している能力に優先的にエネルギーが回されるようになっている。頻繁に使う回路には、頻繁に電気信号が通っていて反応が速く、神経自体も太い。

時間管理が苦手な人は、時間を感知する神経の反応が鈍いのだ。これが時間管理の能力の差として出てくる。そこで、時間を把握する神経活動を積極的に使い、太い回路を作っていくことが大切になるという。

例えば、マルチタスクを避け、一度に行う仕事や作業を1つだけに絞る方法がある。

脳は1つの課題だけを与えられ、エネルギーに余裕ができると過去の作業と現在の作業を比較して、現在の作業時間を把握する。この無意識かつ自動的に時間を把握する脳の働きを邪魔しないことが、時間把握能力を向上するコツになる。

2つ目は、別の能力を使って時間把握能力を代行する方法だ。

脳の中では「時間把握」と「空間把握」の2つの能力がエネルギーを取り合っていると考えられている。脳の中で担う部分が共通しているので、資源の奪い合いが起こるのだ。

しかし、脳には可塑性があり、苦手な能力は得意な能力で代行することができる。その代行ルートが開拓できて、頻繁に使われるようになるとその神経はどんどん敏感に太くなっていく。その原理により、空間把握能力で時間把握能力を高めることができるのだ。

先延ばし行動が、脳を疲れさせてしまう理由

本書によれば、普段何気なくやっている些細な先延ばし行動は、脳を疲れさせる。

やるべきことを覚えて、一旦別の作業をしたのちに、適切なタイミングで思い出すのが展望記憶だ。そのやるべきことを再開するまでの間隔が長ければ長いほど、思考の切り替えが難しくなるという。情報にアクセスする神経活動を維持するには、たくさんのエネルギーが必要になるのだ。

ついつい、受け取ったメールを後で返信しようと手を付けなかったり、公共料金の請求書の振り込み期限を確認してそのままにしておくなどの行動をしていないだろうか。それが展望記憶課題を増やし、脳を疲れさせる原因になっていると、菅原氏は言う。

タイミングよく予定を思い出して時間通りに行動するには、先延ばし行動を避け、無駄に展望記憶課題をつくらないことが大切だ。

とはいえ、分かっていても、やる気が起きないという人もいるだろう。そんな先延ばしを防ぐために、本書ではすぐに体が動く3つの方法が紹介されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー

ビジネス

NY外為市場=円急落、日銀が追加利上げ明確に示さず

ビジネス

米国株式市場=続伸、ハイテク株高が消費関連の下落を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中