最新記事

トレーニング

筋トレは量か強度か 「囚人筋トレ」のポール・ウェイドが全てを語った

Dragon Door Interviews Paul “Coach” Wade

2018年8月6日(月)20時30分
エイドリアン・ハーベイ、RKCII

takoburito-iStock.

<刑務所内で体を鍛え、出所後、自重トレーニング本『プリズナートレーニング』を出版して話題になったポール・ウェイド。めったに取材を受けない彼が、昔と今の自重トレーニングの違いから、特に欠かせないエクササイズ、トレーニングに行き詰まったときにすべきこと、フィットネス業界の潮流までを語り尽くした>

ポール・ウェイドは、しぶしぶながらメールインタビューに応じてくれた。インタビューは受けない主義だが、今回は例外ということだ。私たちはメールで素晴らしい会話を交わした。その大部分を紹介しよう。

ドラゴンドア『プリズナートレーニング』(邦訳:CCCメディアハウス)を出版しようと思ったきっかけは?

ポール・ウェイド:私は刑務所にいたとき、夢中で体を鍛えており、トレーニングの本を書くべきだと何人かに言われた。その1人、看守のロニーについては本の中でも触れている。

今の囚人たちのトレーニング方法について書くつもりはなかった。むしろ、古い囚人たちのトレーニング方法に興味を持っていたためだ。彼らは今とは全く異なる発想、全く異なるアプローチでトレーニングに取り組んでいた。ウェイトも器具もなく、自分の体をジムにして鍛えていたのだ。

私はこのアプローチや、それを構成するテクニックがこの世から失われてほしくなかった。だから、多くの助けを借り、1冊の本にまとめ上げた。

ドラゴンドア:古い囚人たちのトレーニングの発想やアプローチの特徴をまとめると?

ウェイド:私はプリズナートレーニングで、「昔」の自重トレーニング(キャリステニクス)と「今」の自重トレーニングに言及している。今の自重トレーニングは、昔と同じエクササイズを何度も繰り返すというものだ。スタミナの強化にはなるが、ほかの効果はない。

一方、昔の自重トレーニングでは基本の動きをマスターし、技術的なバリエーションを見つけ、時間をかけて強度を上げていく。このような方法でトレーニングすれば、短期間でとても強くなり、筋肉も大幅に発達する。また、この方法は関節にも優しい。単純に聞こえるし、実際その通りなのだが、正しくトレーニングすればという条件付きだ。

このことを本当の意味で理解しているコーチは数えるほどしかいない。すぐに思い浮かぶのはカバドロ兄弟やザック・イーブン・エッシュだが、彼らは10万人に1人の逸材だ。ほとんどのアスリートは、あのレベルのコーチとトレーニングする幸運に恵まれていない。

絶対に欠かせないエクササイズを選ぶならブリッジ

ドラゴンドア:トレーニングに必要な集中力や自制心は、刑務所暮らしに耐える助けになったか。

ウェイド:服役中、トレーニングが私の全てになった。トレーニングには多くの利点があるが、刑務所では時間を縮めてくれるという利点がある。5年とか7年といった刑期については考えず、今日のトレーニングと明日の目標にただ集中するだけだ。これは、おそらくあなたが想像している以上に、囚人たちの助けになる。

私自身もトレーニングのおかげで薬物をやめることができたと確信している。私は依存しやすい人間だ。ただ依存の対象が薬物からトレーニングに変わっただけだ。もし自重トレーニングがなければ、私は間違いなく死んでいただろう。

ドラゴンドア:プリズナートレーニング1と2(続編の邦題は『プリズナートレーニング 超絶!!グリップ&関節編』CCCメディアハウス)のエクササイズはどれも、非常にパワフルだ。もし絶対に欠かせないエクササイズを1つ選ぶとしたらどれだろうか。

ウェイド:全身の筋肉と腱を強化するという意味では、ブリッジに勝るエクササイズやメソッドはない。また、ブリッジは肺活量や柔軟性の強化にもなる。

2冊目は高度な内容だが、一連のツイストはほとんどの人に大きな効果があると思う。体をひねることで、体が若返ったような感覚になり、肩や腰の痛みも治ってしまう。3位を選ぶとしたら、ヒューマンフラッグだろう。全身と体の側面を鍛えることができるためだ。

【参考記事】ジム通いもプロテインも不要な「塀の中の筋トレ法」が日本上陸

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ネクスペリアに離脱の動きと非難、中国の親会社 供給

ビジネス

米国株式市場=5営業日続伸、感謝祭明けで薄商い イ

ワールド

米国務長官、NATO会議欠席へ ウ和平交渉重大局面

ワールド

エアバス、A320系6000機のソフト改修指示 運
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中