最新記事

投資の基礎知識

つみたてNISAから見えてくる、投資とコストの甘くない関係

2018年7月9日(月)18時15分
網代奈都子 ※株の窓口より転載

つみたてNISAで買えるのは投資信託のみ

NISAとつみたてNISAでは、投資の手法とその対象も大きく異なっています。NISAの場合、自分の好きなように株式や投資信託を買うことができますが、つみたてNISAは、その名のとおり積立のみ。

そして、NISAでは、国内外の上場株式と、ほとんどの投資信託(ETF、リート含む)が対象ですが、つみたてNISAを利用して買うことができるのは「一定の条件を満たした投資信託」のみ。つまり、個別の株式を買うことはできません。

言い換えると、NISAでは、非課税となる投資枠や期間こそ制限がありますが、それ以外は自由に運用することができます。長期保有するもよし、短期トレードをやってみるもよし。自分が好きな会社の株を好きなときに買うことができますし、なかには積立のできる投資信託もあります。

一方、つみたてNISAなら、投資枠が小さいことが、かえって気軽に始められるポイントかもしれません(買いすぎる心配がない)。また、投資対象が限られているので悩む幅も少なく選びやすいでしょうし、さらに、積立なら「買いのタイミング」を気にする必要もありません。

つみたてNISAならではの魅力

金融庁のサイトによると、つみたてNISAは「特に少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度」です。そのため対象商品は、手数料が低水準で、頻繁に分配金が支払われないなど、長期・積立・分散投資に適した投資信託に限定されています。

具体的には、以下の要件をすべてクリアした投資信託(ファンド)のみが対象です(ETFはこれに該当しません)。


【つみたてNISA対象商品の要件(公募株式投資信託の場合)】

・販売手数料はゼロ(ノーロード)
・信託報酬は一定水準以下(例:国内株のインデックス投信の場合5%以下)に限定
・顧客一人ひとりに対して、その顧客が過去1年間に負担した信託報酬の概算金額を通知すること
・信託契約期間が無期限または20年以上であること
・分配頻度が毎月でないこと
・ヘッジ目的の場合等を除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと

手数料がほとんどかからない

要件にある「販売手数料」とは、ファンド購入時にかかる手数料です。通常1〜3%で、最近は1%以下のものも増えていますが、つみたてNISAの対象商品はすべて0%(ノーロード)。

たとえば、20万円で投資信託を購入しようと思った場合、販売手数料が3%のファンドでは、19万4000円分しか買うことができません。ノーロードで20万円分を買える場合と比べると、「スタート地点でまず損をしている」わけです。

「信託報酬」はファンドを運用するための費用で、保有している間ずっとかかります。年率で0.1〜2.4%程度が一般的ですが、毎年かかるだけに、この差も決して侮ることはできません(要件の具体的数値はファンドのタイプによって異なります)。

わかりやすく言うと、つみたてNISAの対象商品は「とにかく手数料が低い」ということです。ファンド選びにおいて手数料は意外と見過ごされがちですが、チリも積もればなんとやら。実は重要なポイントでもあります。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中