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世界で10万人以上が学んできた「先延ばし」克服の科学的メソッド

2018年7月19日(木)18時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Stefano Spicca-iStock.

<「先延ばしする人は優秀な人」だが、もちろん減らせたほうが人生はもっと充実したものになる――「先延ばし克服の伝道師」ことチェコ人のピーター・ルドウィグは、世界中の文献を読み漁り、誰もが使える9つの克服ツールを開発した>

ダイエットや禁煙、面倒くさそうな仕事は「後でしよう」「明日から」と、先延ばしをした経験が誰にでもあるはず。「先延ばし」は心理学、脳科学から行動経済学まで幅広い分野で研究対象となっており、人類にとって永遠のテーマである。

このたび本国チェコをはじめ、ドイツ、フランス、ロシアなど世界各国でベストセラーになっている『先延ばし克服完全メソッド』が邦訳、刊行された(斉藤裕一訳、CCCメディアハウス)。

人類の敵である「先延ばし」は完全にゼロにすることはできないが、減らすことはできる――そう話す著者ピーター・ルドウィグは、先延ばしに打ち勝つために「9つのツール」を開発し、「先延ばし克服の伝道師」として世界中を飛び回っている。日本版刊行に合わせて来日したルドウィグに、先延ばしとは何か、どうすれば克服できるか、そして本書を執筆した経緯について聞いた。

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来日時に取材に応じたチェコ人著者のピーター・ルドウィグ「本の図版は全て自分で描いている」 Newsweek Japan

「先延ばし」と「怠惰」は異なる

現代社会は先延ばしが起こりやすくなっている。情報化が進み、インターネットなどを介して大量の情報が一気に流入してくるが、人間の脳のキャパシティはインターネット誕生以前から変わらないため、情報処理能力がそのスピードに追い付くことができないのだ。

それにより、物事の優先順位をつけられない「決断のまひ」という現象が起きており、どうしても先延ばしをしてしまうことになる、とルドウィグ。ただし、注意したいのは、「先延ばし」と「怠惰(たいだ)」は別物であることだという。

「先延ばしとは、意図的、あるいは習慣的に物事を先送りすることです。ですから、最初からやる気がなかったり、単にだらだらしている人は先延ばしをしているとは言いません。ある物事をやり遂げようという意志はあっても、エンジンがかからずにいる人が先延ばしをしている人です」

その「やる気のエンジン」をかけるためにルドウィグが友人と開発したのが、以下の9つのツールだ。

・自分のビジョン
・習慣リスト
・To-Doトゥデー
・To-Doオール
・ヒロイズム
・インナースイッチ
・フローシート
・ハムスターからのリスタート
・自己会議

これらは全て、先延ばしに関する研究から生み出されたオリジナルのツールだという。メソッドの根幹にあるのは「クリティカル・シンキング」で、情報過多の時代に良質な情報を自ら選択していく能力を養うことを目的としている。ただし、これら9つのツールを全て使う必要はないとのこと。

「一番使いやすいツールは『自分のビジョン』だと思います。目標を単に繰り返すだけでは、『目標中毒』になるだけです。例えば難関大学に入ることを目標にすると、合格した瞬間に目標を失うのと同じで、目標達成後のつかの間の喜びは続きません。そうではなく、その先にもつながる永続的な目標、つまり『自分のビジョン』を持つことによって『やる気』のエンジンをかけ続けることができるのです」

一流アスリートや成功している実業家にとって、物事の遂行を可能にしているのは「つかの間の喜び」ではない。彼らは「自分のビジョン」を持ち、「フロー状態」、つまりそのビジョンに挑戦している過程が楽しく、没頭できる状態になっているのだという。

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