最新記事

資産形成

シンガポール人が日本人より金持ちの理由 老後資産は目標1億円超!

2018年2月24日(土)17時50分
花輪陽子(ファイナンシャルプランナー)※東洋経済オンラインより転載

シンガポール人は、今や日本人よりもお金持ち。なぜそうなったのかには明確な理由がある(写真:Jui-Chi Chan-iStock.)

私が今暮らしているシンガポールは、香港とともに、金融資産1億ドル(約107億円)を超える「超富裕層世帯」の割合が多いといわれています。世界中から富裕層が集まりますが、小さな政府であるため、先進国にもかかわらず公的年金がありません。では、シンガポールの人たちは、老後資金をどのように準備しているのでしょうか。

「世界一豊か」でも、国を当てにできない

「老後に1億2000万円必要だから」

これは、シンガポールの知識層からたびたび聞くフレーズです。しかも、皆一律に迷いなくこの数字が出てきます。日本人の場合、「老後のおカネって、いくら必要なんだっけ!?」という人がほとんどだと思います。

日本とシンガポールの一番の違いは、国民のマインドです。シンガポールでは国を当てにできないため、老後資金は自力で確保するという覚悟を皆持っています。そのため、多くの人が若い頃から老後資金作りに励んでいるのです。実際、強制的に行う確定拠出年金(401k)のような仕組みが用意され、老後の備えができるようになっています。

なぜ、1億2000万円も必要なのでしょうか。シンガポールの老齢者の月間平均支出は、30万円(年間360万円)ほどです。65歳から90歳までの25年間で換算すると、9000万円になります。医療費の自己負担が6割程度と大きいために、トータルでそれだけの金額が必要になってくるのです。

では、日本で老後を送るにはいくら必要でしょうか。総務省の家計調査(2015年)によると、年金世帯の月間の平均支出は、27万5706円(年間330万円程度)です。25年間で8271万円程度が必要です。こう見ると、シンガポールとそれほど変わらないことがよくわかると思います。

はたして日本人も、1億円近いおカネを貯める必要があるのでしょうか。まず、日本では公的年金が支給されます。年金世帯の平均収入は月21万3379円(年間約256万円)、25年間で約6401万円です。必要総額に対して年金などの収入だけだと、約1870万円の赤字になります。そのため、不足分を確定拠出年金(401k)などで準備しなくてはなりません。

生活費のほかにも、住宅の修繕や介護費用など、予備費も少なくとも1000万円程度は必要です。世帯で少なくとも3000万円程度は用意したいものです。有料老人ホームに入居する場合は、さらに多額の老後資金が必要です。退職金が出る、出ないなど、人によって条件は違います。「自分のケースがどうなのか、よくわからない」という人は、ファイナンシャル・プランナーなど、専門家に見積もってもらうことをお勧めします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中