最新記事
BOOKS

具体と抽象を意識するだけ...インプット力とアウトプット力を伸ばす思考法【頭をよくする】

2024年8月7日(水)17時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
Be Smartのイメージ

Fathromi Ramdlon-pixabay

<「頭のよさ」はインプットとアウトプットから成り、インプットとアウトプットとは抽象化と具体化の能力である>

同じ講義を受け本を読んだとして、すぐに活用して結果を出せる人と、成長につなげることができない人がいる。この差は努力やがんばりの問題ではなく、情報処理の仕方の違いによって生まれる。

高校3年生の秋から受験勉強を始め、塾に通うことなく東大に現役合格した日本教育研究所代表の谷川祐基氏は著書『賢さをつくる 頭はよくなる。よくなりたければ。』(CCCメディアハウス)で、頭をよくする方法を解説している。

足が速くなりたければ、速く走れる方法を習い練習すればよい。同様に、頭をよくするには、頭をよくする方法を理解し、練習することだ。本書より、「頭のよさ」について取り上げる。

◇ ◇ ◇

求められる「頭のよさ」は年齢によって変わる

「頭がいい人って、どういう人のことでしょう?」。小学生を相手にこの質問をすると、おおむね次のような答えが返ってくる。「いろいろたくさんのことを知っている人!」「テストの点数が高い人!」。

なるほど。素直な答えだ。だが、この本を読んでいるあなたにとっては、もしかして違和感がある答えかもしれない。知識量やペーパーテストで頭のよさを測ることはナンセンスだと考える人は多いだろう。

では年齢を上げて、高校生や大学生に同じ質問をするとどうだろうか? 「こいつは頭がいいなと、どんなときに感じる?」と聞くとこんどは次のような答えだ。「あいつは頭の回転が速くて、すぐに気の利いた返事が返ってくるんだ」「言うことが論理的だから、いつも言い負かされちゃって反論できない」。

少しニュアンスや視点が変わってきたのにお気づきだろうか? 比較しやすくするために、学校の先生にも聞いてみよう。小学校の先生に「どんな子が頭がいいと感じますか?」と聞いてみると次のような答えだ。「頭がいいと感じる子は、やっぱり飲み込みが早い子ですね。少し説明しただけですぐに全体を理解してくれるんです」。

続いて高校の先生にも同じ質問をしよう。「どんな子が頭がいいと感じますか?」。「頭のいい子って、ちゃんと自分の頭で考えるんです。言われたことを鵜呑みにせず批判的に物事を捉えます」。先生に聞いても、小学校と高校の先生とでは少し言うことが違ってくるのだ。

子どもはインプット、大人はアウトプットが重視される

最後に、働いている社会人にも聞いてみよう。「あなたの周りの頭のよい人って、どのような人でしょうか?」という質問をしてみる。「発想が豊かで、他の人が思いつかないアイデアを出してくる人ですかね」「あの人はとても説明が上手で、難しいこともわかりやすくしてくれるんです」「私が頭がよいと思うのは、効率的で無駄がない動きができる人ですね」。

さてここまでいろんな人に「頭のよさ」の定義を聞いてみたわけだが、お気づきの点はあっただろうか? 一見、バラバラである。「頭のよさ」を定義してもらうと、みんなが違うことを言う。だから、頭のよさは測れない、人それぞれと言われがちで、頭をよくするための方法もわからないように感じられる。

しかし、人それぞれに見える頭のよさの定義も、注意深く観察すると、とある明確な傾向があることに気づく。それは、学校ではインプット力が重視され、社会に出るとアウトプット力が重視されていくという傾向である。

頭のよさとは『賢さをつくる』より.jpg

学校でも、年次が低いほどインプット力が重視される。小学校や中学校で重視されるのは、「知識量がある」「理解力が高い」「飲み込みが早い」というインプットする能力から見た頭のよさだ。一方で、大人になって社会で求められるのは「発想が豊か」「説明がうまい」「行動が効率的」「判断が的確」といったアウトプットする能力のほうだ。

高校や大学での頭のよさとは「自分の頭で考える」「頭の回転が速い」「論理的」「応用力がある」といった、インプットとアウトプットの中間に位置する能力を指すことが多い。社会で最終的に求められるのは、アウトプットする力である。すごく売上を上げてくるとか、青色LEDを発明してノーベル賞を受賞するといった成果が評価される。学校と社会では、求められる頭のよさの「方向」が違うのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮提供の兵器、ロシアの備蓄を拡大=ドイツ軍トッ

ワールド

中国主席、ノルウェーと環境分野で「友好」協力 首脳

ワールド

プーチン氏、西側メディアとのインタビューに興味なし

ワールド

イランはパートナー国、「全分野で対話」=ロシア大統
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア国内の「黒海艦隊」基地を、ウクライナ「水上ドローン」が襲撃...攻撃の様子捉えた動画が拡散
  • 2
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 3
    メーガン妃が自身の国際的影響力について語る...「単にイヤリングをつけるだけ」
  • 4
    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…
  • 5
    歯にダメージを与える4つの「間違った歯磨き」とは?…
  • 6
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 7
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 8
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 9
    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…
  • 10
    「1日15分の運動」で健康状態が大きく改善する可能性…
  • 1
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 2
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 3
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
  • 4
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 5
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 6
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 7
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つ…
  • 8
    世界最低レベルの出生率に悩む韓国...フィリピンから…
  • 9
    「私ならその車を売る」「燃やすなら今」修理から戻…
  • 10
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンシ…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 10
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中