最新記事
ビジネス

企業側の論理による「働き方改革」ではない...カゴメ有沢正人CHOに聞く、「生き方改革」の真髄

2024年2月28日(水)11時33分
flier編集部

ただし、カゴメでは「空いた時間を自己研鑽に充てなさい」とは言いません。それは業務命令になってしまう。空いた時間の過ごし方は本人の自由です。私なんて、阪神ファンなので阪神の試合を観にいっていますし、ドラマも毎クール全て見ていますから(笑)。

また、副業を解禁し、「他社と雇用契約を結んでもいい」としました。副業もリスキリングの1つになり得ますし、その経験を次のキャリアにつなげてもらえたらいいと考えているんです。提案当初は、役員から「優秀な人が流出する」と言われましたが、人をリテンション(維持)するのではなくアトラクト(魅了)する会社になればいいと説得しました。

人事施策では、「想像力」と「創造力」が必要だ

──「生き方改革」を進めるなかで壁にぶつかることもあったのではと思いますが、壁をどう乗り越えていったのでしょうか。

難しい局面でも、トップを巻き込めば何とかなると考えています。新たな人事施策を打ち出し、経営者に説得する際には、「ベストシナリオ」と「ワーストシナリオ」を見せるんです。「この施策を行うとこんないいことが起こる可能性が高い。実現できるかはわからないが、逆に今何もしないと、〇年後にこんなよくないことが起きる」というように。

人事制度改革というと、「5年後、10年後も盤石な制度をつくらなくては」と考える人もいます。ですが、それは違います。これだけ急速にマクロ環境が変化するなかで、人事制度を一度導入したら変えてはいけないなんて幻想ですよ。

大事なのは、「変えてダメだったら撤退する」という勇気をもてるかどうか。私の場合も、自分が企画した施策が実施に至ったのは、打率としては3割くらいです。

人事施策をつくる際に必要なのは、「想像力(イマジネーション)」と、「創造力(クリエイティビティ)」。想像する際には、短期と中長期の両方の視点をもつようにします。もちろん、いったん導入して定着したら終わりではなく、制度疲労が起きていないか見直すことも必要です。

──撤退する勇気をもつこと、外部環境の変化を前提に動くことが大事なのですね。

未来は予測できないことも多いですが、色々と情報収集していると、一定の見通しを立てられます。たとえば一般論ですが、円安は今後も一定期間続き、原材料費の高騰により商品価格の改定を迫られるかもしれません。すると改定した価格でもお客さまに納得いただけるよう、自社のバリューを伝えられる人材が必要になる、というように。

今の中期経営計画は2025年に終わります。その先の2035年や2050年のビジョンを見据えて、どんな能力のある人材が必要かを考え、育成の道筋をつくれるか。そこが人事の腕の見せどころです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米加州の2035年ガソリン車廃止計画、下院が環境当

ワールド

国連、資金難で大規模改革を検討 効率化へ機関統合な

ワールド

2回目の関税交渉「具体的に議論」、次回は5月中旬以

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米国の株高とハイテク好決
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中