最新記事
日本企業

日本流でインドを変える! 世界シェア1位を狙うパナソニック配線器具事業「現地の評判」

2023年9月6日(水)07時00分
安藤智彦

買収して工場を抜本的に改革、年4億2000万個製造能力に

そんな強気の姿勢を裏付ける、積極的な生産体制の増強もインドでは進む。拠点となるのは各地に分散させた7工場と30の営業所。うち配線器具に関しては北部ウッタラーカンド州のハリドワール工場と、南部アンドラプラデーシュ州のスリシティ工場を中心に製造量を拡大中だ。

business202309panaindia_4b.jpg

ハリドワール工場で製造する製品群。多品種少量生産が軸になってきている Photo by Tomohiko Ando

ハリドワール工場は、8万7000平方メートル近い敷地に2つの建屋を擁し、約4800人が働く。元々アンカーが運営していた工場をパナソニックが引き継ぎ、規模や生産性を向上させてきた。買収当時は、工場の周囲や製造現場が散らかり放題で事故も多く、とても製造に集中できる環境とはいえなかったという。

「日本の津工場(三重県)と共通の設備を導入した上で、技術者も招聘して指導にあたるなど、抜本的な改革や底上げを図った」と、現地で配線器具など電材事業の生産管理の責任者を務める小林健太郎氏は振り返る。

business202309panaindia_5.jpg

作業中の従業員たち Photo by Tomohiko Ando

津工場でも導入済みの自動化技術と現地従業員の手作業を組み合わせながら、多品種少量生産に対応した今では年4億2000万個の配線器具製造能力を有する同社のインド最大の工場へと姿を変えた。

大規模なIoTと自動搬送車を導入した「日本以上の工場」

business202309panaindia_6b.jpg

スリシティ工場。工業団地の一角に東京ドーム3個分の敷地を構える Photo by Tomohiko Ando

一方、2022年4月に創業開始したばかりのスリシティ工場では、かつてお手本だった日本の工場よりもさらに先を見据えた最新の設備が稼働している。

IoT技術による集中的な生産管理と、ロボットの活用による部品製造から組み立て、工場内の搬送に至るまでの徹底した自動化が特長だ。さらに生産性を向上させるため、スリシティ工場ではインドで需要の多い5品目に特化して量産している。

business202309panaindia_7b.jpg

工場内はロボットが行き交う。自動化が進み、規模の割に従業員はそう多くない Photo by Tomohiko Ando

およそ13万3000平方メートル(東京ドーム3個分に相当)というハリドワール工場の1.5倍の敷地で働く従業員はわずか300人ほど。現在の配線器具製造能力は年1.2億個だが、今後も従業員数をさほど増やすことなく、2030年までに年3億個まで引き上げる算段が既に立っているという。

筆者は今夏、ハリドワールとスリシティの両工場を視察したが、確かに後者の従業員は驚くほど少なく、大小の自動搬送車がひっきりなしに行き交う様子が目についた。

小林氏は、「日本の工場では、ここまでの規模のIoTや自動搬送車を試すことはできなかった。いずれインドで培った製造技術を日本へ輸出する可能性は十分にある」と話す。

なお、パナソニックが日本流をインドに融合させ、「シン・インド」的なメソッドを構築してきたのは製造面だけではない。

インドでパナソニックの配線器具を扱う4500店以上を販売管理システムでつなぎ、販売網を全土に展開するが、流通や販売後のサポート面でも、日本で培ってきたノウハウが注入されている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

次期FRB議長は「大幅利下げを信じる人物」=トラン

ビジネス

金融政策の具体的手法は日銀に委ねられるべき、適切な

ビジネス

中国の若年失業率、11月は16.9%に低下

ワールド

米大統領3期目、憲法は「不明確」 弁護士がトランプ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中