最新記事

漁業

タダ同然の魚からお金を生み出す...... 24歳シングルマザー社長が日本の漁業に奇跡を起こした

2022年10月8日(土)11時00分
坪内知佳(GHIBLI代表) *PRESIDENT Onlineからの転載
坪内知佳さんと萩大島船団丸船団長の長岡秀洋さん

坪内知佳さんと萩大島船団丸船団長の長岡秀洋さん。彼との出会いが坪内さんの人生を変えた。写真=畑谷友幸


山口県に本社を置く「GHIBLI」は、「船団丸」ブランドで漁獲した魚を消費者に直接届ける自家出荷ビジネスを展開し、急成長。苦境にあえぐ漁業界で大きな注目を浴びている。日本でこれまで誰もできなかったことを実現したのが、24歳で事業の代表に就任した坪内知佳さんだ。シングルマザーで、「家なし、金なし、職なし」から大逆転。その歩みが日本テレビ系列でドラマ化された。原作書籍『ファーストペンギン』で明かされた、偶然の出会いと情熱が生んだ「奇跡の物語」とは──。

※本稿は、坪内知佳『ファーストペンギン』(講談社)の一部を再編集したものです。

24歳シングルマザーの「まさか」の挑戦

私は、山口県に本社を置く、魚と農産品の販売を主なビジネスにする株式会社「GHIBLI(ギブリ)」を経営し、後述する「船団丸(せんだんまる)」という事業を展開している。

しかし、もともとは漁業とまったく無縁の存在だった。

名古屋外国語大学を中退し、山口県出身の男性と結婚、出産したものの、結婚生活はあっけなく破綻(はたん)した。24歳でシングルマザーになった私は、様々な偶然が重なり、萩大島の漁師たちと関わり、気が付けば彼らと一緒に日本の漁業の常識を打ち破ることになった。

そんな私を「ファーストペンギン」に喩(たと)えてくれる人もいる。

「ファーストペンギン」とは、集団で行動するペンギンの群れのなかから、最初に飛び出す一羽のこと。これが転じて、リスクを恐れず初めてのことに挑戦するベンチャー精神の持ち主を「ファーストペンギン」と呼ぶようになったらしい。

漁業と小さな島のために奮闘

もっとも、私自身は「ファーストペンギン」に喩えられることを光栄に感じつつも、戸惑ってもいる。

振り返れば、どこにでもいる一人のシングルマザーが、大勢の人たちに助けられながら日本の漁業と小さな島のために奮闘してきただけなのだ。

まだまだやりたいことも、やらなければいけないことも山積みだ。周囲の皆さんから「よく、ここまでやり遂げましたね」とお褒めの言葉をいただくこともあるが、正直なところ、「そんなふうに認めていただけるほど、立派なことはできていない」と思う気持ちがある。

まだまだ道半ばなのだ。

漁師から消費者個人へ直接届ける

日本では、多くの魚や農産物は漁協や農協などの出荷団体に集まり、仲買人(仲卸業者)と呼ばれる中間業者を経由して、全国の小売店の店先に並び、消費者に届くシステムになっていた。

しかし、GHIBLIでは獲れた魚や野菜を漁獲、収獲から半日以内に生産者自身の手で箱詰めや加工処理をし、「船団丸」ブランドとして直接、全国の消費者に届けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪首相、ネタニヤフ首相の批判を一蹴 パレスチナ国家

ビジネス

香港取引所、上期利益40%増で過去最高 取引や上場

ビジネス

首都圏マンション、7月発売戸数は34.1%増 平均

ワールド

NZ中銀、政策金利3年ぶり低水準に下げ 追加緩和も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 6
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 10
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中