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iPhone買うと5万円の利益!? 「販売しろ」と怒声の転売ヤーに店員が従うしかない理由

2022年9月14日(水)19時00分
山野祐介(行動するお金博士) *PRESIDENT Onlineからの転載

携帯キャリアがスマートフォン本体をいくらで仕入れているのかは不明だが、前述のようにiPhone12を2万2000円で販売したら、赤字なのは間違いないだろう。大サービスの割引原資は、あなたが支払った料金だ。

私自身も不健全な状況ではあると思うが、転売ヤーを批判するつもりはない。法律で認められた範囲であれば、誰もが自らの利益のために最善手を打つ権利があると思う。

ふるさと納税の返礼品に金券を選ぶのは「ズルくない」のか

私の家の近所には、スーパーが数件ある。その日の気分でどこに行くかを決め、肉や野菜などの食材を買うのだが、スーパーへ行く前にチラシをチェックして、安い方のスーパーを選ぶようなことはしない。おそらく、ご近所の主婦から見れば無駄遣いだろう。この場合、私がスーパーマーケットに対するリテラシーを持っていないから、無駄なお金を払っていることになる。では、チラシを比較して「スーパーマーケットでお得に買い物する主婦」はズルいのだろうか。

以前、ふるさと納税(そういえば、これも菅元総理の肝いり施策だ)で大阪府泉佐野市や静岡県小山市が返礼品に金券を用意し、多数のふるさと納税を集めたことがあったが、「換金性の高いプリペイドカード」の返礼品は総務大臣による通知で禁止されていた。

しかしながら納税者にペナルティーはないため、多くのメディアで取り上げられたし、実際にふるさと納税でこれらの自治体を選んだ人も多いだろう。これも感情的な面で言えば「ズルい」と思うし、国の財産である税金を盗んでいるわけだから、ある意味では携帯キャリアから金を(間接的に)奪う移動機販売よりも悪質だと思うのだが、なぜかこちらを批判する声は少ない。

「端末代金と通信料金の完全分離」は愚策だった

私個人の意見で言えば、回線と割引のセット販売自体は所持できる回線数に上限がある以上、無限に特価を享受することはできないため、これを廃止してしまった「端末代金と通信料金の完全分離」は愚策だったと思っている。

しかし一度禁止となった施策が復活するとは思えないので、「1名義、もしくは1機種につき特価販売は年間〇回まで」と、割引が適用できる回数に上限を定めてしまえばこうした状況は緩和されると思う。既に一部キャリアでは、こうした運用を行う動きも出ているようだ。

もちろん、これでも一部の転売ヤーは名義を借りるなど、何らかの方法で突破を図ってくるだろうし、販売履歴を審査するキャリア側の負担は増える。それでも現状よりはマシになるはずだ。ただし、これだけでは前述したような「端末を割り引いてくれない大手キャリアを使う理由がない」という問題は解決していないため、応急措置にしかなりえない可能性は残る。

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