最新記事

メンタルトレーニング

あらかじめ想定していれば不幸にも耐えられる、メンタルを守る「皇帝の哲学」

2021年11月10日(水)11時56分
ニューズウィーク日本版編集部
マルクス・アウレリウス像

マルクス・アウレリウス像 Fabianodp-iStock

<人生の苦難に対応するレジリエンスを高める技術は、2000年前から存在していた。エジソンからジャック・ドーシーまで、数々の知の巨人たちを虜にしてきた「ストア哲学」が再び脚光を浴びている>

哲学と聞いただけで、アレルギーを発症する......なんて人はいないだろうが、多くの人は目を背けるか、自分には関係のないこととして無視を決め込むかもしれない。しかし哲学の叡智は、何が起こるかわからない不確実性の世界を生きる我々を、どうやら手助けしてくれるらしい。

欧米では、ストア哲学に対する関心が高まりつつあるという。古くはジョン・D・ロックフェラーやトーマス・エジソンらの起業家がこの哲学から影響を受けたと言われ、現在ではハフィントン・ポストの社主、アリアナ・ハフィントンや、SquareやTwitterのCEOであるジャック・ドーシーがシリコンバレー・ストイックと呼ばれるほどの信奉者だという。

また、ストア哲学をテーマにした書籍も年数十冊のペースで出版されている。軍隊ではストイシズムを一部採用した「ウォリアー・レジリエンス・トレーニング」が開発され、NFLの幹部で元ニューイングランド・ペイトリオッツ監督のマイケル・ロンバルディはストア哲学を取り入れた指導方法を実践するなど、現代になって人気が復活しているのだ。

第16代ローマ皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌス(121-180)は、ストア哲学を精神的支柱とした哲人君主として知られる。彼は、パックス・ロマーナと呼ばれる古代ローマが最も繁栄を謳歌した百年の、最後の時代を統治した。彼の個人的な覚書とも言える『自省録』は今も読み継がれ、愛読書にあげる政治家も多い。

マルクス・アウレリウスは、ローマ帝国の皇帝として、ペスト禍や相次ぐ戦争、はたまた弟の不祥事、部下の反乱など数々の苦難を乗り越えてきた。そんな彼の足跡から、リスクと不確実性に満ちた今の世界を生き抜く指針が得られる『ローマ皇帝のメンタルトレーニング』(CCCメディアハウス)が発売された。

哲学と心理療法が現代人のメンタルを鍛える

『ローマ皇帝のメンタルトレーニング』は、作家であり認知心理学療法士であるドナルド・ロバートソンによってまとめられた書だ。古代哲学と心理療法の関係を専門とする彼は、20年にわたって研究を続けている。ストイシズムと認知行動療法(CBT)を組み合わせ、読者自身が日常生活で実践できるセルフヘルプ・マニュアルを構築した背景には、何があるのか。

『ローマ皇帝のメンタルトレーニング』
 ドナルド・ロバートソン (著)
 山田 雅久 (翻訳)
 CCCメディアハウス
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノキア、第3四半期営業利益が予想上回る AIとクラ

ビジネス

ニデック、26年3月期の業績予想を未定に変更 自社

ワールド

中国副首相、24─27日に米と通商協議 マレーシア

ビジネス

STマイクロ、第4四半期は増収見込む 設備投資計画
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 3
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 7
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 8
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 9
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中