最新記事

コミュニケーション

成功する情報発信に共通する「ナラティブ」とは、戦略PR第一人者が解説

2021年10月19日(火)19時34分
flier編集部
本田哲也

本田哲也 Tetsuya Honda

<SNSを中心とした現代の情報発信、特に企業のPRには欠かせない視点となった「ナラティブ」を第一人者の本田哲也氏に聞く>

※この記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です。

いま日本企業でも注目を浴びている「ナラティブ」。物語的な共創構造を意味し、企業視点のストーリーとは似て非なるものだといいます。企業のコミュニケーションで重要となる「ナラティブ」の本質とは何なのか。企業がナラティブカンパニーをめざすことでどのような効果が期待できるのか? こうした点をビジネス視点で解説する初の教科書が『ナラティブカンパニー』(東洋経済新報社)です。

その著者であり、戦略PRを日本で浸透させ、「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」に選ばれたPRストラテジストの本田哲也さんにお聞きします。

世の中は「ストーリー」から「ナラティブ」へ

── 本田さんが『ナラティブカンパニー』を執筆された動機は何ですか。

ナラティブという概念が今後企業の変革において非常に重要な概念であることを、ビジネス視点で体系的に整理しておきたいと考えたためです。ナラティブとは「物語的な共創構造」のこと。ストーリーとどう違うのかを、「演者」「時間」「舞台」の3つの観点からざっと解説しましょう。

まずストーリーは企業やブランドが主役であるのに対し、ナラティブは生活者が主人公となります。次にストーリーには起承転結という言葉のように「終わり」があるのに対し、ナラティブは常に現在進行形で未来を含む。ストーリーはその企業が属する業界を舞台にすることが多いのに対し、ナラティブは社会全体を舞台とします。こうした違いを明示しながら、ナラティブがいま企業で求められる理由を、豊富な事例とともに体系的に整理したのが本書です。

── ナラティブへの注目が集まってきたのはコロナ禍が始まってからでしょうか。

実はコロナ禍になる前から、世界的にPRやマーケティング、ブランドコミュニケーションの領域で、「ナラティブ」という言葉の出現率が上がってきていました。またノーベル賞を受賞した経済学の大家ロバート・シラー教授も自著『ナラティブ経済学』において、経済事象を引き起こす「ナラティブの力」に着目していました。「ストーリー」から「ナラティブ」へ、これがグローバルな潮流なのです。

そんななか2020年春、新型コロナウイルスの流行で初の緊急事態宣言が出され、企業の多くがユーザーとの接点をこれまで通りもつことが難しくなった。PRや情報発信のあり方を変える必要性に迫られたのです。そこで日本でも「ナラティブ」に注目が集まりました。その意味では、コロナが後押しになったといえます。ですが、消費者やユーザーに受け入れられた事例と受け入れられなかった事例の違いを見ていくと、生活者や社会に寄り添う「ナラティブ」があるかどうかは以前からカギになっていたことがわかります。

211015fl_nar02.jpg

『ナラティブカンパニー』
著者:本田哲也
出版社:東洋経済新報社
flierで要約を読む

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル、ハマスのメンバー3人殺害 ヨルダン川西

ビジネス

米インフレ、目標に向け推移 労働市場は堅調=クーグ

ワールド

韓国大統領、戒厳令を解除へ 「国会の投票を尊重」

ビジネス

FRB利下げ、12月も排除せず 時期は柔軟に対応=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない国」はどこ?
  • 4
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「IQ(知能指数)が高い国」はど…
  • 6
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 7
    スーパー台風が連続襲来...フィリピンの苦難、被災者…
  • 8
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 9
    なぜジョージアでは「努力」という言葉がないのか?.…
  • 10
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 6
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 9
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 10
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中