最新記事

世界経済

EU、ワクチン接種進まず 景気回復も米国に遅れか

2021年2月11日(木)10時24分

ユーロ圏諸国は米英に比べて新型コロナウイルスワクチンの接種が遅れているが、このままではその影響で景気回復でも後れを取る可能性がある。写真は2020年4月、独ウォルフスブルクの自動車工場で代表撮影(2020年 ロイター)

ユーロ圏諸国は米英に比べて新型コロナウイルスワクチンの接種が遅れているが、このままではその影響で景気回復でも後れを取る可能性がある。

国際通貨基金(IMF)は先月、中国の力強い景気回復をたたえ、米国と日本の経済は今年末までにコロナ禍前の水準に戻ると予想。しかしユーロ圏がこれに追いつくのは来年にずれ込むとの見通しを示した。

バイデン米政権が1.9兆ドルの追加経済対策を目指しているのに対し、欧州連合(EU)は新型コロナ復興基金をどのプロジェクトに使うかを未だに交渉中だ。

一方、EUはワクチン接種の遅れと変異ウイルスへの懸念から、感染拡大抑止のための制限措置を緩和するのが難しくなっている。

S&Pグローバル・レーティングスのEMEA(欧州・中東・アジア)首席エコノミスト、シルベイン・ブロイヤー氏は「ウイルスの変異とワクチン接種との競争が続いている。そうした中、ユーロ圏諸国はワクチン接種で後れを取っているのが現実だ」と語った。

発表されたデータによると、ユーロ圏の景気は1月に一段と悪化した。制限措置がサービス業を直撃した格好。多くの欧州諸国では、現在の制限措置が3月か、あるいはそれ以降、例えば一部措置は9月半ばまで続くとの見方もある。

GDPを押し下げ

EUは昨年12月27日に鳴り物入りでワクチン接種を開始したが、未だに実施が進まず、ワクチン不足にも苦しんでいる。

貿易保険グループ、ユーラー・ハーミーズの計算では、EU主要国のワクチン接種率は1日当たりで人口の平均0.12%と、英米の4分の1にとどまっている。

「アワ・ワールド・イン・データ」によると、EU諸国でこれまでに1回目の接種を受けたのは人口の約3%なのに対し、米国は9%、英国は14%に達している。

ユーラーによると、これは5週間の遅れに相当する。このまま是正されなければ今年の域内総生産(GDP)は900億ユーロ近く失われ、四半期成長率にして2%ポイントの押し下げとなる計算だ。

同社は「(ワクチン接種)競争で最初にゴールした国々では、今年後半に強い正の乗数効果が働いて消費と投資を押し上げるだろう。一方、接種の後方走者は危機モードから抜け出せず、経済的にも政治的にも多大な代償に直面する」とみている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

グローバルな経済環境、今後も厳しい状況続く=英中銀

ワールド

モスクワ軍事パレード、戦闘用ドローン公開 ウクライ

ワールド

ロシアで対独戦勝記念式典、プーチン氏は連合国の貢献

ビジネス

三井住友銀行、印イエス銀の株式取得へ協議=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 8
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 9
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 10
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中