最新記事

世界経済

EU、ワクチン接種進まず 景気回復も米国に遅れか

2021年2月11日(木)10時24分

欧州の景気回復ペースが遅いと、経済に「傷跡」、つまり長期的な打撃が残る恐れがある。特に心配なのは若年者の長期失業者だ。こうした失業者は2008/09年の世界金融危機後に増え、ようやく近年になって改善し始めたところだった。

欧州有力シンクタンク、ブリューゲルの推計によると、EU諸国では昨年第2・四半期に15―24歳の労働者の失業率が前年同期の14.9%から16.4%に上昇。一方、55―64歳の層では5.1%から4.8%へと、逆に下がっていた。

金融政策がかい離

ユーロ圏の景気回復が遅れると欧州中央銀行(ECB)としては、米景気の回復で世界的に金利が上昇した場合でも超金融緩和策を維持するという難しい状況に追い込まれかねない。

欧米の金融政策の分離状態は、既に市場に表れ始めている。10年物米国債利回りが年初から20ベーシスポイント上昇した一方、ドイツの10年物国債利回りはマイナス0.46%前後で推移している。

ジェフリーズの欧州エコノミスト、マルチェル・アレクサンドロビッチ氏は「今はどの中銀も同じ事を行っているが、22年にはECBが依然としてより緩和に傾くことで、他の中銀との政策のかい離を巡って多くの問題点が出てくるだろう」と述べた。

もっとも、欧州諸国は米国ほどではないにせよ積極的な財政・金融政策を行っているため、世界金融危機の後に比べれば回復の遅れが小幅にとどまるかもしれない。

ベレンバーグのアナリストらは、経済がコロナ禍前水準への回復に要する期間はユーロ圏が約9四半期、米国が6四半期と予想。世界経済危機の後はユーロ圏が回復に7年かかった一方、米国は3年半で元に戻っており、当時に比べると差は小さくなるとみている。

(Dhara Ranasinghe記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・フィット感で人気の「ウレタンマスク」本当のヤバさ ウイルス専門家の徹底検証で新事実
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】



ニューズウィーク日本版 非婚化する世界
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月17日号(6月10日発売)は「非婚化する世界」特集。非婚化と少子化の波がアメリカやヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「キーウに最大規模の攻撃」、世界遺産

ビジネス

韓国、対米交渉担う通商交渉本部長に呂翰九氏 文政権

ワールド

台湾、中国スパイ容疑で4人起訴 元高官との情報

ビジネス

アングル:超長期金利に低下圧力、財務省対応で思惑 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 4
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 9
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 10
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中