最新記事

映画

韓国映画、Netflix配信に裁判所が「停止命令」 ポストコロナ時代の映画ビジネスにも影響か

2020年4月8日(水)21時29分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

既にすでに30ヵ国で販売済み、70ヵ国での追加契約を控えているとして海外版権販売の会社はNetflix配信停止の訴訟を起こした。  연합뉴스TV / YouTube

<全世界的に引きこもり生活が行われるなかで利用が急増している映像ネット配信サービス。一方で劇場閉鎖で作品を公開できない映画会社には業界ルールを破って新作をネット配信する動きも>

新型コロナの影響でエンタメ業界が大きな打撃を受けている中、隔離生活中に家で自由に映画を観ることができる映像ネット配信サービス=OTTの業界は人気が急伸している。特に最大手Netflixは、アクセスが集中したため一時接続ができなくなるなどの問題も生じるほど人気を集めている。

そんなNetflixで、今月10日に世界配信が決まっている1本の韓国映画が、今韓国国内で波紋を呼んでいるのはご存じだろうか?

韓国映画『狩りの時間』は、今年行われた第70回ベルリン映画祭で、韓国映画として初めてベルリナーレ・スペシャルガラ部門に招待されたということで公開前から関心度が高まっていた。さらに、主演俳優の一人チェ・ウソクは、米国アカデミー賞で4冠を獲得した映画「パラサイト」での息子ギウ役の好演で注目され、その次回作だったこともあって多くの映画ファンが公開を待ち望んでいた。

本来なら、2月20日から開催されていたベルリン映画祭と同時期の2月26日に韓国全国公開予定だったが、新型コロナの感染拡大は深刻化し、公開を延期せざるを得なくなってしまった。

感染収束の兆しが見えないまま公開日が決まらず1カ月が過ぎた3月下旬、制作会社であるリトル・ビッグ・ピクチャーズは突然「劇場公開はせずにNetflixで全世界190カ国に配信する」と発表。ハリウッドの大作映画ですら1年近い公開延期を発表するなど、映画業界への新型コロナの影響が深刻化しだしたタイミングでの発表だった。

確かに今公開したところで、映画館には観客はいない状態だ。大事な作品を赤字覚悟で公開してしまうよりは、劇場公開をあきらめ配信に切り替えた方法は得策だったと言える。では、なぜ配信先行型公開が問題になっているのか?

実は、この映画の海外版権がすでに日本、香港、オーストラリアなど14の国と地域へ販売され、その中の数カ国からは約2億ウォンの契約金も入金されている状態だったという。海外セールスを担当していた海外版権窓口のコンテンツパンダは、「これは二重契約に当たる契約違反だ」と主張。制作会社リトル・ビッグ・ピクチャーズは「Netflixと契約を結ぶ前に事前通達を行い、すでに同意を得ていた」と、両者の言い分は真っ向から対立。

コンテンツパンダはソウル地方裁判所に契約破棄の無効と上映禁止を求める訴訟を起こし、9日裁判所はコンテンツパンダの訴えを認めて、「韓国をのぞく全世界での劇場、ネット、テレビを通じて上映、販売、配信したり、ビデオ・DVDなどの制作・販売・頒布などの公開をしてはならない」という判決を下したのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米連邦地裁、H─1Bビザ巡る商工会議所の訴え退ける

ワールド

米東部の高齢者施設で爆発、2人死亡 ガス漏れか

ビジネス

午前の日経平均は続伸も値幅限定、クリスマス休暇で手

ビジネス

歳出最大122.3兆円で最終調整、新規国債は29.
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中