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韓国映画、Netflix配信に裁判所が「停止命令」 ポストコロナ時代の映画ビジネスにも影響か

既にすでに30ヵ国で販売済み、70ヵ国での追加契約を控えているとして海外版権販売の会社はNetflix配信停止の訴訟を起こした。  연합뉴스TV / YouTube

<全世界的に引きこもり生活が行われるなかで利用が急増している映像ネット配信サービス。一方で劇場閉鎖で作品を公開できない映画会社には業界ルールを破って新作をネット配信する動きも>

新型コロナの影響でエンタメ業界が大きな打撃を受けている中、隔離生活中に家で自由に映画を観ることができる映像ネット配信サービス=OTTの業界は人気が急伸している。特に最大手Netflixは、アクセスが集中したため一時接続ができなくなるなどの問題も生じるほど人気を集めている。

そんなNetflixで、今月10日に世界配信が決まっている1本の韓国映画が、今韓国国内で波紋を呼んでいるのはご存じだろうか?

韓国映画『狩りの時間』は、今年行われた第70回ベルリン映画祭で、韓国映画として初めてベルリナーレ・スペシャルガラ部門に招待されたということで公開前から関心度が高まっていた。さらに、主演俳優の一人チェ・ウソクは、米国アカデミー賞で4冠を獲得した映画「パラサイト」での息子ギウ役の好演で注目され、その次回作だったこともあって多くの映画ファンが公開を待ち望んでいた。

本来なら、2月20日から開催されていたベルリン映画祭と同時期の2月26日に韓国全国公開予定だったが、新型コロナの感染拡大は深刻化し、公開を延期せざるを得なくなってしまった。

感染収束の兆しが見えないまま公開日が決まらず1カ月が過ぎた3月下旬、制作会社であるリトル・ビッグ・ピクチャーズは突然「劇場公開はせずにNetflixで全世界190カ国に配信する」と発表。ハリウッドの大作映画ですら1年近い公開延期を発表するなど、映画業界への新型コロナの影響が深刻化しだしたタイミングでの発表だった。

確かに今公開したところで、映画館には観客はいない状態だ。大事な作品を赤字覚悟で公開してしまうよりは、劇場公開をあきらめ配信に切り替えた方法は得策だったと言える。では、なぜ配信先行型公開が問題になっているのか?

実は、この映画の海外版権がすでに日本、香港、オーストラリアなど14の国と地域へ販売され、その中の数カ国からは約2億ウォンの契約金も入金されている状態だったという。海外セールスを担当していた海外版権窓口のコンテンツパンダは、「これは二重契約に当たる契約違反だ」と主張。制作会社リトル・ビッグ・ピクチャーズは「Netflixと契約を結ぶ前に事前通達を行い、すでに同意を得ていた」と、両者の言い分は真っ向から対立。

コンテンツパンダはソウル地方裁判所に契約破棄の無効と上映禁止を求める訴訟を起こし、9日裁判所はコンテンツパンダの訴えを認めて、「韓国をのぞく全世界での劇場、ネット、テレビを通じて上映、販売、配信したり、ビデオ・DVDなどの制作・販売・頒布などの公開をしてはならない」という判決を下したのだ。

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