最新記事

ヨーロッパ経済

EUの未来を左右する予算分捕り合戦

今回のEU首脳会議では初めて予算削減に着手するが、フランスや南欧諸国の抵抗は必至

2013年2月7日(木)17時19分
クリスティン・ディージー

2人のボス EU各国に財政健全化を求めるメルケル(右)とユーロの番人ドラギECB総裁 Mario Anzuoni-Reuters

 ベルギーの首都ブリュッセルで今日から始まる欧州連合(EU)の首脳会議。加盟国がEU経済の未来について議論する場だが、話題がEU予算に及ぶとまさに泥沼状態になる。

 欧州市場は今も債務危機にあえいでいるが、経済的に貢献度の高い国々、とりわけユーロに参加していないイギリスは、EU予算の大幅な歳出削減を求めている。
 
 放漫財政で危機を招いたギリシャなどの南欧諸国に対して、イギリスやオランダ、スウェーデン、ドイツなどの優等生は、さらに厳しい緊縮財政を強く求めているほど。ユーロ圏の長期的な財政健全化に資すると証明しない限りは歳出合意をを阻止すると脅している。

 会議を取り仕切るEUのヴァンロンプイ大統領にとっては、これこそが最大の課題のようだ。「EU史上初めて、実際に予算を削る話になるだろう」と約束した。

 アンチ緊縮のフランスにとっては聞きたくもない話だが、ドイツのメルケル首相は見解の相違を解決するために会議に先がけフランスのオランド大統領と会談する。

 歩み寄りは難しいだろう。オランドは最近、「大幅削減」を求めながらリベート(払戻金)の受け取りは続けようとしている国を非難した。この発言は、デービッド・キャメロン首相とイギリスに向けたものだと見られている(EU予算からの農業補助金の受取額が少ないイギリスは、84年のサッチャー政権時から、EU予算の負担分のうち年間30億ユーロの払い戻しを受けている)。

一筋縄でいかない予算協議

 東欧諸国もまた、EUからの補助金やそのほかの開発支援を念頭に置いて、歳出カットに抵抗すると見られている。

 ただこれも今に始まったことではない。EU予算の協議は一筋縄でいかないことで悪名高い。そこでヴァンロンプイは、予算案を事前に公表しないことで、協議に新鮮な変化をつけようと試みている。メンバー国は事実上、会議の席に付くまで最も肝心の予算案の中身を知らないということだ。

 通貨ユーロの未来にはまだ疑問が残る。欧州の株価は厳しい1年のあと多少立ち直り、市場は過信に陥りつつあるのかもしれない。「欧州債務危機が忘れ去られている間にもユーロ圏は縮小を続け、最悪期を脱したとはいえイタリアやスペインは今も不況で塗炭の苦しみを味わっている。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中