最新記事

スマートフォン

アンドロイドを見下すiPhoneユーザーの傲慢

大人気アプリがアンドロイドに登場し、一部のアップルファンが不満を爆発させた理由

2012年5月22日(火)15時02分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

ああ勘違い iPhone4を持てば誰でも芸術家になれる? Jessica Rinaldi-Reuters

 iPhoneで大人気の写真用アプリ「インスタグラム」のアンドロイド版が登場した。

 アンドロイド・ファンにはうれしいニュースに、たいそうご不満なのがアップル・ユーザーの皆様方だ。「下層階級のアンドロイド人と一緒にされるのはごめんだ」などと、ネット上で嫌悪感をぶちまけている。

 ならば私も言わせてもらおう。私はインスタグラムも、あれを使う気取り屋も嫌いだったが、これでますます嫌いになった。

 インスタグラムは、自分の撮った写真にフィルターをかけ、レトロなアナログ感を出すシンプルなアプリだ。

 このアプリが一昨年の秋頃に出現して以来、およそ才能はないのに流行にだけは敏感な連中がこぞって、くだらない写真を撮りまくるようになった。どんな駄作も、インスタグラムでフィルターをかければ「アート」になると勘違いしている。

 彼らは次に、フェイスブックなどのソーシャルネットワークにアクセスし、自慢の作品をべたべた貼り出した。それだけでは飽き足らず、みんなでシェアするに値すると信ずる「傑作」を見つけたら、それもどさどさ貼り付けるようになった。

 そして今ではちょっとした写真家気取り。たちの悪いことに、アートや文化を論じる見識もあると思い込んでいるらしい。だからこそ彼らは、アンドロイドでインスタグラムを使えるようになったら、自分たちの大事なアートクラブが下劣な作品で「汚染される」と不満の声を上げている。

洗脳されたユーザーたち

 悪い冗談だと、初め私は思っていた。しかし気が付けば大手メディアもこの話題を取り上げていて、アップルとアンドロイドの「階級闘争」だなどと論じている。

 この闘争の根っこには、アップル派は「高所得で趣味が良く」、アンドロイド派は「アップル製品の良さが理解できない、あるいは理解しても安価な後発商品を選ぶ愚か者」という決め付けがある。
両陣営のユーザー層に違いがあるのは事実だろう。しかし、それを階級闘争にまで発展させるのは大げさだし、ばかげている。私はアップル携帯もアンドロイド携帯も持っていて、両方を使い分けている。

 iPhone4Sは素晴らしい製品で、私自身も多くの人に推奨してきた。だがアンドロイド携帯にも、同じぐらい素晴らしいものがある。例えばモトローラ製の最新機種、ドロイドレーザーマックスは私のお気に入りで、今は一番よく使っている。

 携帯は今や私たちの生活に欠かせない存在で、文字どおり肌身離さず持ち歩くもの。だから着る服や乗る車と同じように、持ち主の人となりを表す要素の1つとなっている。

 アップルのマーケティング部は、アップル製品を買えばセンスが良くて優れた人になれると人々を洗脳することに成功した。アップル製品を購入すれば誰でもアートやデザイン、建築やファッションの専門家に変身できると信じ込ませたのだ。

 もちろん、アップル製品を買えばセンスが良くなるとか、無料アプリをダウンロードすれば写真家になれると信じているのは愚か者だけだ。だがアップルとインスタグラムのおかげで、こうした愚か者が爆発的に増殖し、ひどい写真や無知な意見を世界中にばらまいている。

 ならばこちらも開き直るしかない。アップルとインスタグラム、そしてアンドロイド派を侮辱する思い上がった諸君に感謝しよう。その憐れむべき愚かな意見とくだらない写真は、実に滑稽な笑いのネタをわれわれに提供してくれるのだから。

[2012年4月18日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、第3四半期は黒字回復 訴訟引当金戻し入れ

ビジネス

JDI、中国安徽省の工場立ち上げで最終契約に至らず

ビジネス

ボルボ・カーズの第3四半期、利益予想上回る 通年見

ビジネス

午後3時のドルは152円前半、「トランプトレード」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選 イスラエルリスク
特集:米大統領選 イスラエルリスク
2024年10月29日号(10/22発売)

イスラエル支持でカマラ・ハリスが失う「イスラム教徒票」が大統領選の勝負を分ける

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはどれ?
  • 3
    リアリストが日本被団協のノーベル平和賞受賞に思うこと
  • 4
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 5
    トルコの古代遺跡に「ペルセウス座流星群」が降り注ぐ
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 8
    中国経済が失速しても世界経済の底は抜けない
  • 9
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 10
    「ハリスがバイデンにクーデター」「ライオンのトレ…
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 3
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 4
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 5
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 6
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 7
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 8
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 9
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 10
    北朝鮮を訪問したプーチン、金正恩の隣で「ものすご…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 5
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 6
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 7
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 8
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 9
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 10
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中