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中国ネットに住む「聴床師」たちとは何者か?

©2024 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<中国には「地面師」......でなく「聴床師」たちが住んでいる。中国高官の噂話をネットで拡散する人々のことだ>
「聴床師(ティンチョアンシー)」は近年、中国語SNS上ではやる造語。中国高官の噂話をネットで拡散する人々の呼称だ。
聴床師たちはまるで北京の中南海に住む共産党高官らのベッド(床)のそばに隠れて秘密の話をこっそり聞いたかのように、「信頼できる内部情報によると」という決まり文句で始まる中国政府の異変や派閥争いの噂話を流す。
例えば、2022年秋の中国共産党大会前、中国語ネットで一時的に最もシェアされた「習下李上」(習近平〔シー・チンピン〕が失脚して当時の李克強〔リー・コーチアン〕首相が最高指導者に就任する)という有名な「内部情報」は、聴床師の傑作の1つだ。
また毎年夏、共産党の最高幹部や長老らが河北省にある避暑地で開く非公式な「北戴河会議」も、聴床師が最も活躍する季節だ。「会議では、幹部らが政策の方向性に不満を抱いて激しく議論した」「党内分裂がリーダー交代につながる」など、全く根拠のない話がネットで現れ、よくシェアされる。
聴床師たちのネット投稿は根拠のない推測がほとんどだが、なぜ信じる人が多いのか。
その最たる理由は、中国政治が完全なブラックボックスであること。ブラックボックスゆえ、一般国民が不安や危機感を覚える。解消する最も有効な方法は、情報を把握することだ。