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化学燃料タンクローリーに食用油を入れられても、抗議しない中国人の心理
©2024 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<中国でまた食品汚染問題が起きた。日本の「汚染水」にはわざわざ国際電話で電凸するのに、自国の食用油汚染や毒ミルクなどの食の安全事件に抗議せず、知らんぷりするのはなぜか>
「俺が料理を炒めるとき、いつも炎が大きく立ち上がる。それは俺の腕前だとずっと思っていたのに、何と、サラダ油の中に灯油が混ざっているのが原因だった──中国人シェフ」
先日、中国メディアの「新京報」が、ある中国大手企業のタンクローリーが「コスト削減」名目で化学液体燃料の石炭油を輸送した後、タンク内の清掃をせずに、そのまま食用油を入れて輸送した、という調査報道記事を公開した。中国ネットは一時大騒ぎになり、誰かが冒頭のジョークをSNS上にアップ。一方で、家庭用油搾り機の人気が急上昇した。
実に中国式な対応である。日本なら、まず政府や企業が記者会見で謝罪。満足する対策が出なければ国民は大きな声で抗議し、法律で自らの権利を守ろうとするだろう。
中国人に集会や抗議の自由はなく、普通の人々は政府や企業の責任を追及する強い権力もない。唯一できるのは、事件を揶揄するジョークをネットでシェアしながら、さっさと家庭用油搾り機を購入すること。彼らは家で食用油を搾って自給自足で身を守る──購入した油の原料に問題なければだが。
今から10年前にも中国メディアが同じような記事を報じたことがあり、この事態は公然の秘密だった。10年前と同じく、今回も一時的に話題になるが、そのまま棚上げにされるだろう。