コラム

「ミニ・トランプ」と呼ばれながらあっと言う間に撤退したデサンティス、全てはあのためだった?

2024年02月02日(金)17時10分
デサンティス

デサンティスは共和党予備選から早々に撤退したが REBA SALDANHA―REUTERS

<共和党候補者争いであれだけ話題を集めていたデサンティスが、まさかの早期撤退。そして今、トランプの副大統領候補として急浮上しているのは、「トランプ推し」の若手女性議員......>

1年ほど前、ロン・デサンティスはアメリカで最もホットな政治家だった。フロリダ州知事選で対立候補に20%の大差を付けて再選。その圧勝ぶりに、評論家は大統領になるのは間違いないと持ち上げた。故ケネディ大統領夫人のジャクリーンと比較される元テレビ司会者の妻を持ち、見栄えのする家族に囲まれたその姿は、共和党のトランプ時代は終わったと思わせた。

だが、予備選の出はなでスターの輝きは消え失せてしまった。デサンティスは初戦のアイオワ州党員集会後、選挙運動の停止を発表。トランプ支持に回った。アイオワ州の党員集会では、どの候補よりも多くの時間をかけて州内を回ったが、結局1つの郡も取れなかった。


共和党の大統領候補指名レースに正式出馬する前は、1対1ならトランプに勝てるとする世論調査もあったが、全米レベルで足場を固めることはできなかった。X(旧ツイッター)での出馬宣言は、不具合により途中で演説が何度も中断され、物笑いの種になった。

デサンティスは要するにトランプの後継者(もっと若くて知的な2代目)になろうとしたが、「王」のほうは玉座を下りるつもりがなかった。

デサンティスがトランプへの怒りを募らせながらも早期撤退を決めたのは、2028年以降の可能性を残すためだ。何しろまだ45歳である。トランプの副大統領候補をめぐる争いは面白くなりそうだ。

前大統領がかつて人気を博した自分のリアリティー番組『セレブリティー・アプレンティス』を模して、候補者に夕食の席で歌を歌わせたり目の前でひれ伏すよう強要しても、私は驚かない。予備選の選挙演説でトランプを酷評したデサンティスやニッキー・ヘイリー元国連大使にも可能性は残されている。

デサンティスはこう指摘した。「たとえアメリカで最も無価値な共和党員でも、指輪にキスすればトランプは褒めてくれるだろう」

副大統領候補レースが始まった

今のところ、トランプの指輪に最もうまくキスしてみせたのは、既に予備選から撤退済みのティム・スコット上院議員と起業家のビベック・ラマスワミだ。スコットは最近、長年の恋人と婚約することで弱点に対処した。トランプは「型にはまった」政治家と組みたがるので、生涯未婚の副大統領は問題外だったはずだ。

一方、ラマスワミの欠点は「伴走者」にしては語り口が流暢で頭の回転が速すぎること。賭け市場では、スコットが選ばれる確率は17%、ラマスワミは14%だ。

トランプが大統領選の本選挙で勝つ確率を上げたいのであれば、民主党と共和党の間で拡大しつつある支持者の男女格差を埋めるために女性を副大統領候補に選ぶべきだ。

最適なのは外交経験があり、テレビ映りのいいヘイリーだろう。今は激しいトランプ批判を展開中だが、自分を猛追するライバルをあえて選ぶことで、トランプをより大きく見せる効果もある。バイデン現大統領も前回の選挙戦で、自分を最も執拗に攻撃したカマラ・ハリスを副大統領候補に選んだ。

賭け市場によれば、ヘイリーが副大統領候補になる確率は9%。現時点で賭け市場の確率トップは、ハーバード卒のエリス・ステファニク下院議員(25%)だ。現在39歳でトランプ以上に目立つ心配はなく、本選挙で女性票の積み増しが期待できる。ステファニクは今回の選挙戦で最初にトランプを支持した下院議員というのが自慢で、前大統領に対する性的暴行の告発は信じていないと公言している。

最後に候補者をもう1人、サウスダコタ州知事のクリスティ・ノームを挙げておく。もしトランプが彼女を選んだら、私は読者から天才と呼ばれるだろう。選ばなくても、忘れてもらえるはずだ。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story