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ロシアが拡大NATOを恐れない理由

しかし、NATO拡大はプーチンがより多くの兵力をウクライナに動員する口実になり得るかもしれない。ロシア国民に対して、西側諸国がロシアを包囲するために徒党を組んでいると示すことができるからだ。
5月16日、ロシア主導の軍事同盟・集団安全保障条約機構(CSTO)の首脳会議がモスクワで開かれ、プーチンは近隣諸国の指導者と顔を合わせた。アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの国家元首たちは、「歴史に残る虐殺者」「戦争犯罪人」のレッテルが定着したプーチンと同席することに困惑する様子は見せなかった。
ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、ロシア周辺でよく聞く陰謀論を展開した。
「ロシアとわが国との安全保障関係がなければ、ベラルーシでは既に『熱い戦争』になっていたのではないか」
ルカシェンコは西側の軍備増強と庶民を直撃する制裁を取り上げ、CSTOは連携と交流を強化し、西側のフェイクニュースと戦い、NATOや国連のように機能するための組織改革で「現在の国際問題」への影響力を強化しなければならないと力説した。プーチンも、米軍は国際法に反してロシア国境付近で生物兵器を開発していると主張した。
こうした物言いは、近隣諸国の指導者よりずっと幅広い層に受け入れられている。この種の陰謀論は現在、ロシアで特に受けがいい。ウクライナ人の私の義父でさえ、独立系メディアが完全に沈黙している今は陰謀論に飛び付き、受け入れている。
この戦争に対するロシア国内の支持を盤石にしている大人気の陰謀論は次の3つだ。
(1)アメリカはロシアの分割をもくろみ、シベリアと極東の資源を盗もうとしている。だからこそロシアは貴重な資源を守るために、ウクライナを死守しなくてはならない。
(2)NATOはウクライナを軍事拠点として利用している。それがロシアとウクライナの分断の中心的理由だ。
(3)西側が支援するアレクセイ・ナワリヌイのような国内の反体制派はCIAの工作員であり、西側と共謀してロシア国家を内部から崩壊させる長期目標の実現を図っている。
こうした陰謀論に基づけば、ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャで発覚した残虐な戦争犯罪も、ウクライナの(あるいはハリウッドの)俳優による「作品」にすぎない。戦争開始以来、こうした説はロシア寄りのTikTok(ティックトック)やテレグラムを通じて拡散され、かなり信者を増やしている。
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