コラム

51番目の州を目指す首都ワシントンの知られざる苦悩

2020年07月07日(火)14時45分

70万人の住民の主権者としての権利が侵害されている AOLDMAN/ISTOCK

<連邦議会へ代表者を送る権利が奪われてから200年以上、不平等はなぜ続くのか>

私は、連邦議会のプログラムでワシントンに招待された国内外の訪問団に講演する機会がよくある。そうした講演では、アメリカという国の基本理念は「機会の平等」を大切にする精神だと説明する。全ての国民は、民主的な政府に自らの意思を反映させる権利を等しく保障される、と。

こうした高邁な理念を述べるとき、私はいつも矛盾を感じずにいられない。その矛盾は、その日訪問団を乗せてきたタクシーのナンバープレートを見れば分かる。

20200714issue_cover200.jpg

アメリカの首都ワシントンは、州としての地位を認められていない。これはアメリカ建国の理念に反し、70万人の住民の主権者としての権利を侵害するものだ。ワシントンがアメリカの首都になったのは1790年。このとき、この町の住民は議会選と大統領選の投票権を奪われた(1961年の憲法修正により大統領選の投票権は認められたが、議会に代表を送る権利は認められていない)。

当時、懸念されたのは、首都に州としての地位を認めた場合、連邦政府の公職者が地元の利害を偏重するのではないか、ということだった。こうして、フランスのパリ以上の面積と、アメリカの50州のうち2州より多くの人口を擁し、22州より多くの連邦税を納めている都市の住人は、立法府に代表を送れなくなったのである。

トランプと共和党は「州」化に反対

大半の住民はこの状況に不満を募らせている。それを知っているので、私は講演をするとき、この町を走る自動車のナンバープレートを思い出して心が痛む。

ワシントンは2000年11月、不満を表明するために、ナンバープレートに「代表なくして課税なし」という言葉を記すようにした(アメリカ独立戦争のスローガンになった言葉だ)。17 年には、より強いメッセージを打ち出すために「代表なき課税に終止符を」という表現に変更された。

なぜ、このような時代錯誤がまかり通っているのか。理由はおそらく3つある。

第1に、ワシントンに州としての地位を認めることに反対する人たちは、ワシントンが連邦政府の資金に大きく依存しているので、連邦政府の監督が必要だと主張する。しかし、現在ではワシントン以上に連邦資金に依存している州が21もある。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

首都圏マンション、2月発売戸数36.8%増 千葉が

ビジネス

アマゾン、米郵政公社経由の配送を大幅削減へ=関係者

ワールド

米、「麻薬密輸船」攻撃で157人殺害 国防総省高官

ワールド

イラン、クラスター弾でテルアビブ攻撃 ラリジャニ氏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 2
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 3
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 6
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 9
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 10
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story