コラム

「トランプ転がし」の名人、安倍に勧める5つの秘策

2019年05月25日(土)20時40分

他者の好意に飢えているトランプに、安倍は望みのものを与えてきた Joshua Roberts-REUTERS

<気まぐれで予測不能で子供じみた大統領から、最大の成果を引き出すために必要なのは変化への備えだ>

トランプ米大統領をおだてることにかけては、日本の安倍晋三首相の右に出る者はいない。手放しの称賛を何よりも好むトランプの性格を考えれば、重要なスキルだ。

安倍の巧みな心理操作の技術は、それだけで日本がトランプの「関税攻撃」の標的になる事態を回避できそうだ。他者の好意に飢えているトランプに、安倍は何の臆面もなく望みのものを提供してきた。

今年2月には、このアメリカ現代史上最も好戦的な大統領をノーベル平和賞に推薦したと報じられた。エイプリルフールの新聞のジョーク記事かと思うような現実離れした話だが、トランプに生涯最大の栄誉の1つ(の資格)をプレゼントしたのだから、トランプは安倍の好意を絶対に忘れないだろう。

とはいえ、過去の成功に酔ってはならない。トランプは恐ろしく気まぐれで予測不能で子供じみた人物だ。トランプの機嫌を損ねた瞬間、ゴミ箱行きになったかつての「お気に入り」は枚挙にいとまがない。安倍が今後、対米外交で大きな成功を収めるために、筆者が(多少の冗談と皮肉を交えながら)トランプの扱い方を伝授しよう。

(1)国内政治

安倍はトランプに会うたび、もろ手を挙げてアメリカ国内での成功を称賛し続けなければならない。トランプの画期的な政策や実績、特にアメリカ経済の好調ぶりと(保守派の最高裁判事指名など)司法の「改革」に焦点を当てるべきだ。あなたはアメリカの政治風景を自分のイメージどおりに変革する大統領だと強調するのも忘れずに。

(2)選挙対策

安倍は20年の大統領選でトランプのライバルになる政治家に繰り返し言及する必要がある。彼らの弱点をあげつらい、トランプがやるように軽蔑的なニックネームを付けるのだ(本人が選挙の遊説で使えそうなものが望ましい)。

ただし攻撃対象には、大統領選でまず勝ち目のない政治家を選ぶこと。トランプは口が堅い人間ではないので、内輪話が外に漏れれば(かつその政治家が大統領になった場合)将来の対米関係に悪影響が出かねない。

(3)東京五輪

華やかな舞台が大好きなトランプにとって、世界最大のスポーツの祭典のホスト役になれないことは残念でならないはずだ。安倍は20年のオリンピック東京大会の準備過程にトランプを巻き込み、何がしかのアドバイスを求めるといい。もし1つでもアイデアが実現すれば、トランプは自分の功績を誇り、東京五輪に貢献したと思い始めるかもしれない。

(4)対中関係

安倍と中国の習近平(シー・チーピン)国家主席の関係は改善に向かっている。中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、安倍は今後もトランプを称賛し続ける一方で、習との緊密な関係も強化し続ければいい。不安に駆られたトランプは習を出し抜いて安倍に取り入ろうとして、日本に寛大な譲歩をする可能性が高い。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米J&J、通期業績見通し上方修正 関税費用予想は半

ビジネス

午前の日経平均は小幅に続落、半導体株安が重し 下げ

ビジネス

長期金利の国民生活への影響注視、為替動向を憂慮=青

ワールド

シリア暫定大統領、ドルーズ派の保護は「われわれの優
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 5
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 6
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 7
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 9
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 10
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story