コラム

タイの「象の足とプール」写真の源は、技巧かユーモアか、それとも...

2018年08月02日(木)18時29分

From Tawanwad Wanavit @tang_tawanwad

<フラッシュを巧みに使い、ユーモアのセンスにも長けたタワンワド・ワナヴィット(27歳)。彼のポップなストリートフォトグラフィー作品の根底にあるものとは>

楽しみを追求することは、写真でも人生でも最も大切なことの1つだろう。今回取り上げるタイのタワンワド・ワナヴィットは、そんな写真哲学を実践している1人だ。チェンマイ生まれ、バンコク在住の27歳である。バンコクのマヒドン大学で写真を学んでいるが、本職は写真家というよりも、テレビやインテーネットのコマーシャルを製作する映像作家だ。

マネーメーキングと情熱を分けている、と彼は言う。後者は、ストリートフォトグラフィーに注がれている。それはワナヴィットにとって興奮させてくれるアドレナリンであり、新しいものを発見させてくれる"実験工場"にもなっている。

非常に技巧派だ。バンコクの都会に限らずタイのストリートは、ワナヴィット曰く、濃い灰色のトーンに満ちあふれた最も撮影が難しい場所の1つらしいが、それをフラッシュを巧みに使うことによってポップでエキサイティングなイメージに仕立てている。

単純なクリップオンでのフラッシュテクニックではない。例えば、下の2匹の鶏の写真では、正面にある被写体とその後方部に当たる光の面と出力を見事にカット/コントロールしている。また、4枚目の写真(次のページ)のように、しばしばフラッシュをカメラから大きく外して、サイドからドラマチックに強烈な閃光を当てたりもしている。

ただ、それらは決して大掛かりなセッティングではない。本職の映像フィルムのスキルを活かし、あるいは、映像の仕事では前もって決められたクライアントの要望に沿って撮影しなければならないため、ストリートでしばしばフラッシュを多用してさまざまなパターンを実験しているだけだ、という。

Tawanwad Wanavitさん(@tang_tawanwad)がシェアした投稿 -

Tawanwad Wanavitさん(@tang_tawanwad)がシェアした投稿 -

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

〔ロイターネクスト〕気候とエネルギー、なお長期投資

ワールド

ミャンマーのアヘン栽培、過去10年で最大 世界最大

ビジネス

国際会計基準審議会、銀行リスク評価の新モデル巡り協

ワールド

子どもの死亡数、今年増加へ 援助削減が影響=ゲイツ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 4
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story