コラム

8x10の大判カメラで撮った「時代に抗う」ポートレート

2018年05月22日(火)16時57分

From Bruce Polin @brucepolin

<ブルックリンの公園でブルース・ポーリンが撮るポートレートに込められた、トランプ時代へのメッセージ>

ポートレートは、写真の王道の1つだろう。被写体が撮影されていることを意識していても、その外面だけでなく、人となりまで、少なくとも垣間見せることができる。

それどころか、被写体と撮影者自身に無意識、あるいは意識的にまとわりついている時代性を表してしまう。ポートレートはそうした意味で、ドキュメンタリーやファインアート、パーソナル写真の核になっているのである。

今回取り上げるInstagramフォトグラファーは、そんなポートレートを8×10の大判カメラで撮っている写真家だ。ニューヨークはブルックリン在住、1960年生まれのアメリカ人、ブルース・ポリーンである。

彼がインスタグラムで継続中の「DEEP PARK」と名付けたシリーズは、ポリーンの代表作の1つだ。ブルックリンのプロスペクト・パークという公園の中で、ここ数年、彼自身が偶然出会った人々のポートレート写真である。

ポリーンは以前からポートレートを撮影していたが、2013年頃までは大半が自宅の地下室での撮影だった。そのマンネリを打破するために彼は、2015年に新しいプロジェクト、8×10カメラによる屋外ポートレート・シリーズの開始を決意する。

しばらくはブルックリンのさまざまな地区で撮影していたが、最終的に、自宅に近く、何よりニューヨークの多様な人々が集う"小宇宙"的なプロスペクト・パークを本格的な舞台として作品を撮り始めた。

白黒写真の被写体は、公園の中でごく普通に佇む人々。だが、非常に神秘的だ。光と構図もさることながら、人物に全く気負いがなく、公園の空気そのものの流れの中に、時としてタイムスリップしたかのように溶け込んでいる。

ポリーンは、被写体を選ぶとき、内面から何かを発している人を選んで撮影すると言う。その内面的な美が現れる瞬間を、被写体とのちょっとしたコミュニケーションを通して導き出し、現れた瞬間につかみ取るのだという。

Bruce Polinさん(@brucepolin)がシェアした投稿 -

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story