コラム

新聞社の元・報道写真家がSNS時代に伝える「写真を超えた何か」

2016年08月30日(火)10時54分

From Richard Koci Hernandez @koci

<さまざまなテクニックやテクノロジーを巧みに組み合わせながらも、その匂いはほとんどしない――。アンリ・カルティエ=ブレッソンやウィリアム・クラインらを尊敬しつつも、典型的なフォトジャーナリストとして働いてきたリチャード・コッチ・ヘルナンデスが辿りついた境地>

 今回紹介する写真家は、リチャード・コッチ・ヘルナンデス。ヴィジュアルアーティストであり、カリフォルニア大学バークレー校でニューメディア・ジャーナリズムを教える准教授でもある。インスタグラムを中心とした写真・ヴィデオ界では、彼のミドルネームであり、インスタグラムのユーザーネームでもあるコッチとして知られている。

 コッチの作品には、なぜかアインシュタインのイメージがつきまとう。物理学者と写真家、まったく異なるように思えるが、2人とも感覚的エクスシーを極限まで追い求める人物だ。アインシュタインは、光と追いかけっこをした夢を見て、その視覚的感覚を追求した結果、相対性理論を生み出した。それまでの理論構築や実証実験は、それがどれだけ偉大なものであっても単なる過程だ。

【参考記事】シャガールのように、iPhoneでイランを撮る

 それに対し、コッチは物理学の理論の代わりに、さまざまな写真アプリやテクニック、デジダル技術だけでなく、時には回帰的にフィルム時代のそれも取り入れながら作品を創り出している。光と影、構図、幾何学性、しばしば使われるダブルエクスポージャー、あるいはモンタージュ......そうしたものが、誇張されながら巧みに組み合わされている。

 だが、テクニックの匂いはほとんどしない。伝わってくるのは、写真を超えた何か。時に都会的で孤独で、研ぎ澄まされているのに重く、同時に飛び散ってしまいそうな感情の動き――彼の言葉を借りればコッチ自身の内面的な動き――である。また、ユーモアを見せてくれる場合もある。

"From there to here, and here to there, funny things are everywhere." -dr Suess #grammasters3 #tiny_collective

Richard Koci Hernandezさん(@koci)が投稿した写真 -

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ支援国首脳会合、9月4日に開催 フランス

ビジネス

トランプ氏一族の暗号資産「WLFI」、取引初日は1

ワールド

北朝鮮の金総書記、列車で中国へ出発=KCNA

ワールド

独国防相、欧州委員長のウクライナ部隊派遣発言を厳し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあるがなくさないでほしい
  • 3
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世界的ヒット その背景にあるものは?
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 6
    BAT新型加熱式たばこ「glo Hilo」シリーズ全国展開へ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    シャーロット王女とルイ王子の「きょうだい愛」の瞬…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story