コラム

マムダニ新NY市長の左派政策、日本への影響は?

2025年11月12日(水)16時30分

マムダニの掲げる政策のほとんどは日本では既に手当てされている問題 Lev Radin/Pacific Press/ZUMA Press Wire/REUTERS

<公約の「家賃抑制」でNYの不動産価格が暴落すれば、東京の不動産バブル崩壊に引火する可能性も>

今月4日に行われたニューヨーク市長選で、民主党左派のマムダニ候補が勝利したニュースは、日本でも話題になっています。一方で、当選したマムダニ次期市長の掲げる政策のそれぞれについては、日本には当てはまらないということはあると思います。

まず、マムダニ氏の掲げる市内のバス無料化ですが、こちらは期待が大きいために、既に無料になっていると勘違いする人が続出しています。ですから、選挙結果を受けて市内のバスは「FARE REQUIRED(運賃が必要です)」と掲示して走っています。実際に実施されるのかどうかは年明け以降に市議会や州議会などとの調整が必要ですが、バスの運転士組合が賛成していることもあり、実現する可能性はありそうです。

ところでニューヨークでは、どうして、このバス無料化が政策として話題になるのかというと、これは通勤手当制度がなく、通勤に必要な交通費が全額自腹というアメリカの慣行が前提となっているからです。ですから、多くの場合は通勤手当があり、しかも非課税である日本では関心を呼ばないのは分かります。

また、5歳児までの託児所無料化という政策に関していえば、日本の場合は、市区町村によって差はあるものの、保育に関しては何らかの公的助成があります。一方で、アメリカの場合は、ほぼ完全に民営であり、コストに利益を乗せた金額が非常に高いので、無償化への期待があるのですが、これも日本では当てはまらないと思います。

そもそも日本とは前提が異なる政策がほとんど

食品スーパーの公営化と卸値での販売というのも、日本ではピンと来ないかもしれません。日本の場合は民営のスーパーでも、多品種の薄利販売が原則です。勿論、現在は物価高が深刻ですが、これは円安が主因であって、コメの場合は政策のミスマッチなど原因は流通とは別のところにあるという理解がされています。ですから、民営のスーパーなどの販売ルートに問題があるという認識はありません。

億万長者への課税という公約に至っては、日本の場合は若者層ですら重税感に苦しんでおり、トータルでの減税を要求するのが民意です。ですから、富裕層に課税して貧困層に還元するという再分配政策に支持が集まるニューヨークとは全く条件が異なっています。

そんなわけで、マムダニ氏の政策は、そもそもの前提が異なる日本に当てはまるものもないし、遠く離れた日本への影響も具体的には少ないと言えるでしょう。その中で、一つだけマムダニ氏の政策が実現した場合に、日本に影響がありそうなのが、同氏の目玉政策である「家賃抑制」です。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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