コラム

日本政府はアジア系へのヘイトの連鎖を断ち切る外交を

2021年03月23日(火)14時00分

3つ目は、「コロナ後」における日中関係の修復です。今年の後半になるのか、2022年に持ち越すのかは予測がつきませんが、日中の人の往来が自由になれば、やがて多くの中国人や韓国人が日本への観光旅行に来日すると思います。そうなれば、日本の観光業界の現場は、コロナ禍によるマイナスを取り戻すべく、必死になってサービスをするでしょうし、あらためて日本の観光業界はその「ソフトパワー」を発揮することと思います。この点については、特に心配していません。

4つ目ですが、上記の1から3をふまえたうえで、在米の日本人、日系人、日本の在外公館、日系企業は、仮にアメリカにおけるアジア系へのヘイトが終息を見ないようであれば、中国系や韓国系とも同調して、しっかりと権利主張を行うべきと思います。

例えば、日系人は戦時収容に関する謝罪は受けていますが、戦前の一連の排日法に関しては当時の日本側が黙認したこともあり、謝罪を受けていません。この問題を解決する際には、中国系とも同調し、中国人排斥の歴史に対してもアメリカ社会に対して一緒に反省を迫るような動きが効果的です。

間違っても、日本人だけが名誉白人のように振る舞ってみたり、アジア系へのヘイトの原因を中国に押し付けたりしてはならないと思います。そのような態度は、アジア系全体への侮蔑を招くだけだからです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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