コラム

最後のテレビ討論はトランプの「やや勝ち」 バイデン優位の大勢は変わらず選挙戦は最終盤へ

2020年10月23日(金)16時30分

(4)一方バイデンは、環境問題でやや踏み込みすぎて中道から右の票を失う危険、それからトランプの「バイデンは民間医療保険を潰す」という非難への防戦が不十分であったなど、微妙に打ち負けていた。バイデンの場合、途中で腕時計を見たのは印象を悪化させた可能性がある。

(5)トランプはバイデンの次男のスキャンダルを大きく取り上げると思われていたが、それは適当に切り上げて、「クライム・ビル(犯罪取締法)」を材料にバイデン批判を展開。90年代に微罪にも厳罰を課すことで治安回復を狙った法律のせいで収監されて苦しんでいる黒人家庭が多いとして、当時法案成立に賛成したバイデンを批判し続けた。バイデンは防戦に回って失点した。

(6)トランプとその側近は「共和党支持者のトランプ離れを食い止める」ことを主眼にしたかもしれず、仮にそうであれば一定程度の効果はあったと思われる。

(7)全体としては、今回の討論単体で考えると「52対48」でトランプが打ち勝ったという印象。

(8)そうはいっても、接戦州のミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニアでの形勢逆転とまでは行かないのではないか? 従って全体としてバイデン有利という情勢が大きく動いたわけではない。その一方で、テキサスをバイデンが取って「地滑り的勝利」という可能性はやや遠のいたかもしれない。

今回、トランプが妙に殊勝だったのは、円満退任と起訴回避へ向けての「出口戦略」を意識し始めたからという気配も若干匂います。しかしこればかりは、そう言い切れる程はっきりしたものではありません。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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