コラム

大嘗祭には国のかたちを深く知る手がかりが残されている

2019年11月12日(火)16時40分

天皇即位に伴う一連の儀式のうちでも大嘗祭は重要な宮中祭祀とされている(写真は即位礼に向かう新天皇) Imperial Household Agency of Japan/Handout/REUTERS

<新米を神前に供える大嘗祭は基本的には「収穫祭」で、稲作文化を国の根幹とする日本の価値観を象徴している>

天皇即位に伴う一連の儀式は、11月10日の祝賀御列の儀(パレード)で一段落したように見えますが、そんなことはありません。11月14、15日には、宮中祭祀の中でも重要とされる大嘗祭が予定されているからです。

この大嘗祭ですが、30年前の平成への代替わりの際には、政教分離に違反するという論争があり、ハンストを行って抗議するグループがあったり、そのグループに対して保守派が抗議したりというような動きがありました。今回は、そのような対立のドラマが起きる気配はありません。これは平成の30年間において、平和国家における象徴天皇制度が安定した支持を獲得した結果だと思われます。

その一方で大嘗祭には、宗教行事であるのに国家予算が使われることへの批判がありました。確かにそのような批判はあり得ると思いますが、宮中祭祀というのは貴重な無形文化財という考え方もできるわけで、その伝統を維持して継承することには社会的な利益があると考えれば、公的な費用が支出されることにも理屈は通るという解釈は可能です。

ただ、せっかく巨額の費用を使って伝統を維持しているのですから、大嘗祭という興味深い「無形文化財」について研究や情報公開を進めることは必要ではないでしょうか。

大嘗祭は基本的には収穫祭です。亀卜(きぼく)、つまり亀の甲羅を焼いて占った結果に基づいて、全国から旧国名で2カ所を選び、そこで特別に生育された稲を刈り取ってできた精米が重要な役割をするのです。ちなみに、今回は下野国(栃木県)と丹波国(京都府丹波地方)でした。

では、単に収穫した米を炊いて神前に供える儀式かというと、そう単純なものではありません。即位した新天皇は、大嘗祭のために作られた大嘗宮の中で、様々な儀式を行い何度も沐浴をし、そうした儀式は深夜にまで及ぶのです。そして、そのほとんどは非公開です。

儀式自体が非公開であり、また宗教性があることを考えると、一種のスピリチャルなパワーを保つために非公開が適当というのは理解できます。そうではあるのですが、21世紀の現在、事後でもいいので儀式の詳細を分かりやすく公開しながら、様々な議論がされてもいいように思います。

注目したい点は2つあります。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

春闘は大手で満額回答相次ぐ、賃上げ5%台維持か 中

ビジネス

マイクロソフト、クラウド契約巡りアマゾンとオープン

ビジネス

日経平均は大幅反発、原油の上昇一服を好感 日米会談

ビジネス

韓国サムスンの労組がスト計画承認、世界の半導体供給
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 2
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 3
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 4
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 5
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 6
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 7
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 8
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 9
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 10
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story