コラム

フリン補佐官失脚が意味する、トランプ政権の抱える脆さ

2017年02月16日(木)15時10分

メディアの矛先はトランプ政権とロシアの「癒着」問題に向いている Carlos Barria-REUTERS

<フリン辞任の背景には様々な憶測が流れているが、米メディアはこれをきっかけにトランプ政権の「ロシア・スキャンダル」を本格的に追及する構えだ>

トランプ政権のマイケル・フリン安全保障補佐官が週明けに辞任したニュースには、衝撃が走りました。基本的には補佐官に就任する前の昨年12月にロシア大使に電話して経済制裁の解除問題について相談したという疑惑、そしてこの件に関してペンス副大統領にウソをついたのが理由だとされています。

ですがこの辞任劇、いろいろとよく分からない点があります。1つの問題は、これは政争なのかという疑問です。フリン氏の背後には、草の根のトランプ支持者がいる一方で、今回の失脚劇には、CIAやFBI、さらには民主・共和両党の「上院情報委員会」の存在がチラついているという見方があります。

さらに言えば、フリン氏が失脚する数時間前になっても「大統領はフリン氏に全幅の信頼を寄せている」と話していたコンウェイ大統領顧問など、トランプ周辺のグループの権力が低下し、その代わりにペンス副大統領を筆頭にした共和党本流が前面に出てきたという解説もあります。

【参考記事】「ロシアが禁止ミサイル配備」にも無抵抗、トランプ政権の体たらく

そんな中で、コンウェイ大統領顧問に関してはテレビの中継で「視聴者に向かってイバンカ・ブランドの商品を買うように」と訴えた「事件」について、同顧問を「処分する」ように迫る動きが出て来ているほか、また労働長官の候補だったバズダー氏を「守りきる」ことができず同氏が「辞退」に追い込まれるなど、大統領の周囲に求心力の低下が見られることも事実です。

では、これが「大統領周辺の草の根支持層派」対「共和党本流」の真剣な政争であり、それこそ「トランプ辞任」で「ペンス安定保守政権へ」という流れの始まりなのかというと、そこまでの動きにはなっていないようです。ただし、注意して見ておくに越したことはありません。

2つ目の疑問は、なぜ「このタイミング」なのかという問題です。一つには北朝鮮がミサイルを発射したことなどで国際情勢が緊迫してきたため、CIAを中心とするアメリカの「インテリジェント・コミュニティ」が「このままではアメリカの情報管理が危険にさらされる」という危機感を持ったという説があります。

一方で、保守派の間で囁かれているのは、CIAやFBIの中に残る「親オバマ派」が新体制の中で自分たちの勢力を維持するために、具体的には人事を有利に運ぶためにこのタイミングで「アンチ・トランプ」に動いたというストーリーです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請件数は1000件減、小幅減も雇用

ワールド

カナダ中銀総裁「予測外れるリスク高まる」、米政策の

ビジネス

米労働生産性、第3四半期速報値は4.9%上昇 2年

ビジネス

トランプ氏「今すぐ大幅利下げを」、金利据え置きでF
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大胆な犯行の一部始終を捉えた「衝撃映像」が話題に
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 6
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 7
    配達ライダーを飲み込んだ深さ20メートルの穴 日本…
  • 8
    致死率高い「ニパウイルス」、インドで2人感染...東…
  • 9
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 10
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 8
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story