コラム

安倍首相の米議会演説に期待できる内容とは?

2015年02月24日(火)17時29分

 というのは、アベノミクスの「第一の矢」である流動性供給、そして「第二の矢」である景気刺激のための公共投資に関しては、どちらも共和党の根本方針である「小さな政府論」の立場からは、認められない考え方だからです。

 イデオロギー的に認められない政策を出動させ、しかも異次元緩和の「バズーカ」まで日銀に打たせ、禁じ手であるはずの「為替操作」に近い自国通貨の価値毀損をやって、「それでも実体経済の戻りが遅い」ということですと、共和党の議員団は、安倍政権に対して冷淡になってもおかしくありません。

 そこで必要になるのが、改革をしっかり進めること、つまりより高付加価値型の産業にシフトすること、競争力を喪失した産業に関してはスクラップ・アンド・ビルドをしっかり行うこと、労働時間の短縮を含むオフィスワークの生産性向上を行うこと、海外からの投資や企業活動の進出にあたっての規制や障壁を除くこと、といった「目に見える」そして「経済成長に直結する」改革を進めているという姿を見せることです。

 仮に安倍首相の「米議会演説」が実現した場合、実はこの点が一番神経を使う点だと思います。一方で、歴史認識に関しては表現上の選択の余地はほとんどありません。テロ対策に関しても実現可能なことは限られており、従って言及できることは限られていると思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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