6.22空爆の裏にある「敵対」と「共犯」の歴史──アメリカとイラン、50年の宿命をひも解く
A TANGLED HISTORY

半世紀にわたり衝突と緊張を繰り返してきたアメリカとイラン Ahyan Stock Studios-shutterstock
<イラン革命で始まった「敵対」の歴史。その裏には、憎悪と計算が絡み合う「共犯」の構図もあった。6.22空爆は、そんな半世紀の関係の延長線上にある>
6月22日にアメリカが実施したイラン空爆は、ほぼ半世紀にわたる両国の敵対関係を改めて強調する出来事となった。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、自らの保身のために戦争を続けているとみられること、そして弱体化したイランの現体制は、国民の愛国心をあおるためにアメリカやイスラエルに厳しい報復措置を取らざるを得ないことを考えると、停戦がいつまで続くかは分からない。
ただ、アメリカとイランの2国間関係の歴史を振り返れば、これから起こることはある程度予測できる。
そもそもアメリカとイランの関係が大きく悪化するきっかけとなったのは、1979年のイラン革命だった。それまでのイランには、53年のクーデターではCIAの支援を受けたモハマド・レザ・パーレビ国王がいて、77年にアメリカを公式訪問するなど親しい関係だった。
パーレビを乗せたヘリコプターがホワイトハウスの前庭に着陸すると、ジミー・カーター米大統領が満面の笑みで出迎えたものだ。だが、カーターの歓迎スピーチを書いた側近は、パーレビは秘密警察を使って反対意見を握りつぶす「血塗られた手を持つ男」だと吐き捨てるように言った。
武器売却代金を反共支援に流用
だが、79年にイラン革命が起こり、パーレビが権力の座を追われ、イスラム法学者による統治を掲げる神権政治が確立された。
さらに同年11月に起きたテヘランのアメリカ大使館人質事件は、米イラン関係に決定的な打撃を与えた。カーターは80年の大統領選に敗北し、アメリカでは政界でも世論でも神権政治やイスラム教へのイメージが著しく悪化した。
その後も、米イラン関係を揺さぶる事件は相次いだ。
80年に勃発したイラン・イラク戦争は、双方に大量の死傷者を出しながら膠着状態に陥り、アメリカはイラクに情報提供や後方支援などをした。
ところが86年に発覚したイラン・コントラ事件では、レーガン政権がイランに秘密裏に武器を売却し、その代金をニカラグアの反共・反政府武装勢力コントラの支援に充てていたことが分かり、大騒ぎになった。
88年には、米海軍の艦艇がペルシャ湾でイランの敷設した機雷に接触する事件が発生。アメリカは報復としてイランの石油採掘プラットフォームを破壊する一方で、イラン航空655便を誤爆する(乗客乗員290人が死亡)悲劇を起こした。
ビル・クリントン米大統領は1995年、厳しい対イラン経済制裁を発動した。これに対してイランの改革派モハマド・ハタミ大統領が「文明間の対話」を呼びかけたことで、アメリカでも警戒しつつ関与に前向きな姿勢が見え始めた。
ところが2002年、ジョージ・W・ブッシュ米大統領は、イランを「悪の枢軸」と呼ぶなど口撃をエスカレート。一方、イランはアメリカがイラン領内に無人機(ドローン)を送り込んでいると主張した。
司令官暗殺で緊張は頂点に
バラク・オバマ米大統領は09年、イラン大統領選後の民主化運動拡大に友好的な姿勢を示した。するとイランは、ペルシャ湾岸からの石油輸送の要衝であるホルムズ海峡を封鎖する可能性を示唆。
それでも15年、イランと欧米諸国はイランの核開発計画を制限し、国際的な監視下に置く包括的共同作業計画(いわゆるイラン核合意)に合意した。
ところが、オバマの次に大統領に就任したトランプはイラン核合意から離脱し、イランに「最大限の圧力」をかけることを宣言。全面的な経済制裁を復活させたほか、イラン革命防衛隊でも精鋭部隊の司令官だったガセム・ソレイマニを殺害させ、緊張はピークに達した。
21年に就任したジョー・バイデン大統領も、経済制裁を維持した。このためイランは、ロシアや中国、さらにはレバノンのシーア派組織ヒズボラやイエメンの反政府勢力フーシ派など非国家組織との貿易や軍事協力を強化していった。
こうした歴史は、私たちに何を教えてくれるのか。
まず、米イラン間の交渉は可能だが容易ではなく、あくまで限定的な成果しかもたらせないだろう。オマーンの仲介で今年4月に始まった政府高官級間接交渉も、アメリカによる空爆後は中断されている。
第2に、イランの現体制は国民の間で不人気だが、体制転換が起こることはないだろう。万が一、アメリカやイスラエルがイランの最高指導者アリ・ハメネイを殺害した場合、むしろイラン国民の愛国心を燃え上がらせる可能性が高い。
第3に、イランはいつも慎重に計算された軍事的な反撃を講じてきた。従って、6月22日のアメリカの空爆に対する報復も、あくまで慎重になされるだろう。カタールの米軍基地を攻撃するにとどめたのも、そのためだ。イランは事前にアメリカ側に報復攻撃の通知さえしている。
アメリカのイラン核施設爆撃と、それに続くイランの慎重な報復は、イランには拒絶できない提案をトランプがするチャンスだ。
Gregory F. Treverton, Professor of Practice in International Relations, USC Dornsife College of Letters, Arts and Sciences
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

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