コラム

ミズーリ州の暴動は沈静化へ向かうのか?

2014年08月21日(木)12時38分

 今回の事態は、92年のロス暴動を思い起こさせます。白人警官による黒人殴打事件について「無罪判決」が出たことを契機として、黒人を中心とした暴動が10日間続く中で、多くの犠牲者を出し、商店や住宅の破壊などが起きた忌まわしい事件です。

 ロス暴動に続いて記憶に新しいのは2012年にフロリダ州で発生した、ヒスパニック系の「自警団員」が同じく丸腰の黒人少年を射殺した事件です。この事件でも、同じような人種対立、社会の分断が起きそうになりました。一部には全米でデモが広がる動きもあったのです。

 ですが、最終的にはメディアも政府も冷静な対応で一貫したため、射殺した自警団員に無罪判決が出た際にも、大きな騒ぎにはなりませんでした。銃規制や、南部特有の「正当防衛を擁護」する法制度への批判はありましたが、人種の分断というような現象には至りませんでした。

 オバマ大統領について言えば、こうした「人種の分断」を回避するための努力を見せたこともありました。例えば、2009年7月ボストンの「ハーバード教授誤認逮捕事件」がいい例です。ハーバード大学の黒人の教授が、出張から戻って自宅のカギを開けようとしてトラブルになっていたところ、パトロール中の白人警官が「侵入盗」と誤認して逮捕してしまった事件への対応がいい例です。

 オバマは、当事者、つまり黒人の教授と白人の警官をホワイトハウスに呼んで、「仲直りのためにビールで乾杯」という演出をしたのです。つまり「こうした誤解を一つ一つ乗り越えて、多くの人種が共存する社会にしよう」というメッセージを発信したというわけです。

 オバマとしては、就任前に自伝などで訴えていたように、自分の存在自体がアメリカン・ドリームであるということ、そして自分が大統領になることが「人種間の和解」を促すということを、自分でも信じ、そして広く国民に訴えてきたわけです。

 ですが、今回の事件は「オバマという黒人大統領」を実現させたからといって、そのオバマの下でもアメリカの社会には、人種間の対立が根深く残っていることを露呈してしまいました。そこには、6年目を迎えたオバマ政権の求心力が落ちたということもあるでしょう。大統領が黒人であることが、かえって「この種の問題に介入しにくく」しているという問題が作用しているかもしれません。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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