Picture Power

【写真特集】ソ連時代の夢の跡に暮らす難民たち

REFUGEES IN THE RUINS

Photographs by SANDRO MADDALENA

2021年08月24日(火)15時30分

廃墟となったサナトリウムは旧ソ連時代、療養の人々でにぎわい、ジョージア出身の独裁者スターリンもこの温泉地を愛した

<現在、ほとんどが廃墟となったジョージア・ツカルトゥボのサナトリウムに暮らすのは、90年代のアブハジア紛争で故郷を追われた国内難民だ>

ppruins-map.jpg

黒海沿岸に近いジョージア(グルジア)西部の町ツカルトゥボは、ソ連時代、温泉保養地としてにぎわっていた。22の壮麗なサナトリウム(保養所)や周辺のホテルを、エリート層や労働者が休暇や療養のために訪れていた。しかしソ連崩壊後、ツカルトゥボは急速に寂れていく。

現在、ほとんどが廃墟となったサナトリウムに暮らすのは、1990年代にアブハジア紛争で故郷を追われた国内避難民だ。アブハジアはもともとジョージアの一部だったが、92年に独立を宣言し、ジョージアとの間で紛争が起きた。約20万を超える難民のうち5000人が、ツカルトゥボのサナトリウム跡に逃れ、現在も数百人がここで生活を続けている。

廃墟となったサナトリウムにガス供給や暖房施設はなく、衛生状態も良くない。ジョージア政府は、難民のための集合住宅の建設とツカルトゥボを温泉リゾートへと再生させる計画を明らかにしている。

しかし、経済状況の悪化で実現の見通しは立たず、コロナ禍で状況は一層悪化している。町の各所に遺るソ連時代の美しいモザイク画が、難民の苦境を一層際立たせる。

ppruins02.jpg

サナトリウム跡のプールで遊ぶ子供たち


ppruins03.jpg

難民の高齢男性たちはサナトリウムの地下にある一室に連日集まって、チャチャ(ジョージアの地酒、ワイン製造で出たブドウの搾りかすから造るウオッカ)を酌み交わす


ppruins04.jpg

現在はアブハジア難民が暮らすサナトリウム跡へと続くエントランス


ppruins05.jpg

曲線と直線が融合したデザインが美しいサナトリウムの階段。この施設は現在、開発業者に売却されたため難民は暮らしていない

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがヨルダン川西岸で道路建設加速、「葬り去

ビジネス

イタリア、今年はEU財政赤字ルールを6年ぶり順守へ

ビジネス

新発10年債利回りが1.670%に上昇、2008年

ワールド

ロシア凍結資産活用、ベルギーがEUに「リスク分担」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 9
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story