コラム

日本のコロナ対策は独特だけど、僕は希望を持ちたい(パックン)

2020年05月01日(金)13時45分

全国に緊急事態を宣言しても態度がご丁寧。他国の首脳は「出るな!撃つぞ!」(フィリピン)と言っているところ、日本は「ご不便をおかけしますが......何とぞご協力をよろしくお願いします」。国民の命を守るための、エレベーター点検の張り紙のような文言。いい国だね!

でも、協力に頼った曖昧な制度だと、自己判断でミスをする人は必ず出てくる。繁華街に行く若者。商店街に行くお年寄り。潮干狩りに行くアサリ好き。大分県での集団参拝や花見的な会食に行く〇〇夫人。まあ、「桜を見る会ロス」の気持ちは分かるけどね。

医療関係者や公職者たちの判断が甘い時もある。会食やカラオケを楽しんだ慶応病院の研修医や、居酒屋で歓迎会に参加した警察署長が実際に感染している。性風俗店に行った野党議員もいた。まあ、個人的な緊急事態の気持ちは分かるけどね。

硬くもきめ細かくもない日本の制度は、小さな穴だらけだ。まさに高野豆腐のように(あ、豆腐の例えが成立した!)。結局、穴から漏れるものも多く、感染を封じ込めることはできていない。

では、なぜ強制的に穴を閉じないのか? 権力の問題?

コロナ危機を利用して権力集中に走る外国政府が目立っている。イスラエルでは携帯のデータで国民を監視し、首相の汚職裁判を延期。チリでは、ロックダウンに動員された警察が反政府デモを制圧。ボリビアは予定していた大統領選挙を延期。極め付きはハンガリー。超法規的な権限をオルバン・ビクトル首相が無期限で握った。独裁者ならではの「ハンガリー精神」だね。

しかし、日本では一切そんな動きが見えない。むしろ、新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正しても、その後に緊急事態を宣言しても、国民の私権は制限しない! 強制力がない! と政府が自ら権力の限界を繰り返し主張する。

なぜなら、いい国だから!

でも考えてみれば、健康増進法改正によって、4月から屋内での原則禁煙があっさり命じられた。コロナ対策も健康を増進するためだが、強制力を持つ法案は出てこない。裏ですったもんだしているかもしれないが、罰金制度などを提案する政治家は表に出ない。なのに、お店で喫煙する人に30万円以下の過料が簡単に科されるのだ。まあ、しょうがない。吸ったもんだから。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾周辺で「正義の使命」演習開始 実弾射撃

ビジネス

中国製リチウム電池需要、来年初めに失速へ 乗用車協

ビジネス

加州高速鉄道計画、補助金なしで続行へ 政権への訴訟

ワールド

コソボ議会選、与党勝利 クルティ首相「迅速な新政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story