コラム

野村元監督に敬意を表し、トランプ弾劾を野球にたとえてみると

2020年02月21日(金)16時00分

17年にホワイトハウスで開催された米国製品の奨励イベントで野球バットを握るトランプ Carlos Barria-REUTERS

<トランプ米大統領は、ウクライナ疑惑をめぐる弾劾裁判で無罪評決を下された。でもこれを「民主党VS共和党」の野球の試合にたとえてみると、おかしなことがいっぱいある>

まずは先日亡くなった、われわれヤクルトスワローズ・ファンのヒーロー、野村克也元監督に心からお礼とお悔やみを申し上げます。

そして、少し野球の話をしよう。というのも、今回は野球をたとえに、ドナルド・トランプ米大統領の「弾劾ゲーム」をわかりやすく解説したい。監督の大好きな野球をこんな風に使うのは恐れ多いが。

例えば......
宿敵のライバル同士、チームAとチームBが連続試合を行っている。しかし、ちょっと変わったルールがあり、試合に勝つと「ホームチーム」となって次の試合の運用権を握り、そのチームのキャプテンが試合の仕切り役を務めることになっているのだ。

前回はチームAが勝ったとしよう。そこで、さっそくプレーボール!

おっと、始球式の前から、変な噂がスタジアム内を飛び交っている。どうやら前回の試合の間、反社会的勢力がスタジアムに忍び込み、空調システムをいじっていたようだ! なんと、チームAの打者がバッターボックスに立つときだけ、館内の空気がホームから外野へと流れるようにしていた。つまり、チームAの打者にとって「追い風」を作っていたのだ! しかも噂によると、そんな不正な協力をチームAのキャプテンが呼び掛けていたというのだ! (ちなみに、この空調テクニックは実際にMLB[大リーグ機構]のスタジアムで使われていた)

噂について調べることになる。特別審査の結果、反社会的勢力が試合に介入したことや、キャプテンがそれを呼びかけたことは確認された。さらに、チームAのキャプテンがずっと捜査を邪魔しようとしていたことも報告した。しかしそこで、ルール委員会長は報告を受け「ノープロブレム」と言う。

ちなみに、「特別審査委員長」はチームAの応援団の一人で、「ルール委員会長」はチームAのキャプテンが指名した人だ。ホームチームの特権っていいね!......プレーボール!

ちょっと待って! またすぐに噂が! 今回は外野側の空調をいじって、チームBの選手がバッターボックスに立つとき外野からホームへと「向かい風」を吹かすという、新しい密計が発覚した。それもチームAのキャプテンが企み、スタジアム入り口の警備の人に実行を頼んでいるという! しかも、キャプテンが握る、警備費の支払いを交換条件に出して圧力をかけているようだ。

この謀策はチームAのメンバーからの内部告発でばれるが、ルール委員会が告発の内容を「ノープロブレム」と判断し、報告書を隠す。プレーボール!

いや、さすがにそうはいかないだろう!

そこで、民主党はトランプの手下に捜査を任せないで、ウクライナ疑惑を弾劾で......。

あっ!ごめん。たとえ話の途中だったね。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ビジネス

米マスターカード、1─3月期増収確保 トランプ関税

ワールド

イラン産石油購入者に「二次的制裁」、トランプ氏が警

ワールド

トランプ氏、2日に26年度予算公表=報道
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story