コラム

「韓国なんて要らない」なんて要らない?

2019年09月24日(火)15時20分
「韓国なんて要らない」なんて要らない?

昨年、韓国のボーイズグループBTS(防弾少年団)が日本で開催したコンサートの会場に集まったファン Kim Kyung Hoon-REUTERS

<ヘイトスピーチと非難された「韓国なんて要らない」というテーマを分野別に議論してみると......>

慰安婦像、徴用工問題、輸出規制、玉ねぎ男......。韓国関連のニュースが毎日、日本の電波をジャックしている。過去の合意をないがしろにする、日本に挑発を続ける、反日感情を政治利用する、そんな国とどう付き合えばいいんだよ......といった、呆れと怒りを込めた論調が毎日飛び交っている。そして高い視聴率も取っている。そんななか、週刊ポストに「極論」が出たのだ。

(情報開示:コラムニストの倫理に沿って、取り上げる組織との関係を報告しよう。僕は小学館から本を出版して、多方面でお世話になっている。が、週刊ポストとは仕事の関係はない。一方、プライベートでお世話になることは昔あった、読者として。まあ、読んでいたというより、主に眺めていただけだけど。)

お笑い芸人は極論が大好き。常識に反する大げさで非現実的な主張は、観客を驚かせて笑いを取るコメディーの定番だ。「温暖化を意識し、二酸化炭素(CO2)削減のために呼吸をしないことにしよう!」とか。

時々、笑いながらそんな極論から大事なヒントを得ることもある。アメリカのコメディアン、ルイス・C・Kは以前、極論の自殺ネタで話題を呼んだ。「日常生活で嫌なことがあったら、いつでも自殺する選択肢はあるよ。運転免許の更新がめんどくさいって? やる必要ないよ! 自殺すれば運転免許試験場まで行かなくて済むじゃん」といった、ブラックかつ不謹慎なネタだ。だが、僕はこれで考えさせてもらった。自殺を勧めているわけではない。むしろ、自殺という選択肢を頭に入れておくことで、生きている意味や価値を再確認することになる。そんなことに気付いた僕はそれから、「生きる選択肢を取る」と、毎日能動的に生活する決意をした。鮫洲運転免許試験場なんて遠いけど、免許更新も喜んでやるようになった。今や、長時間の更新講習を受けたいからゴールド認定されないような運転を心がけているし。

コントロールできない相手がいるときにこそ、極端な選択肢を念頭に入れることは大事。相手が希望通りに動いてくれないときは、対応策を決める前に最悪の事態を考えるべきだ。会社に昇給交渉を挑む前に退職する選択肢を考えるとか、配偶者と喧嘩する前に離婚の可能性を思い出すとか(知り合いの夫婦は、離婚届けに一度ハンコを押して以来、それを提出せずに仲良くできているという)。これに近い考え方を交渉専門家は、交渉が不成立で終わるときの最良代替案 Best Alternative to a Negotiated Agreement という。が、専門用語が多くなるとまた自殺したくなるからやめよう。

最悪の選択肢。これを意識することで、現状に隠れていた価値や可能性に気づく。議論で同じ効果を得るために、極論はとても役に立つ。でも、日本で極論が出るたびに大体大騒ぎになる。例えば
▼竹島は韓国にあげればいい!
▼(北方領土返還は)戦争をしないとどうしようもない!
▼日米安保条約は不公平。在日米軍は撤退だ!
などが記憶に新しい。これらには問題発言として批判が殺到した。上の1つ目と2つ目は、発言したタレントや国会議員がすぐに謝罪することになった。3つ目は謝罪していないが、発言した米大統領は恥ずかしさで、顔が真オレンジになっていた。

今回の「韓国は要らない」の記事も似たような展開を見せた。出版後にヘイトスピーチだと非難され、週刊ポストが「誤解を広めかねず、配慮に欠けておりました」と謝罪をした。残念ながら、どこが誤解を招いたのかについて具体的な説明はなかった。多くの人は「韓国人は怒りを抑えられない病気にかかっている」という誹謗中傷気味なイメージを与えそうな内容を差していると推測した。確かに、記事にある「怒りを抑えられない『韓国人という病理』」という乱暴かつ差別的な論点は多くの人を傷つけるものであろう。でも、それを大文字の見出しにするぐらいだから、誤解というより、受け取ってほしいメッセージそのものだったのではないだろうか。どちらなのか、教えてほしかった。結局、謝罪文自体が誤解を招いているかもしれない。

極論は危険物。丁寧に扱わないといけない。上記の3つの発言者が思い知らされたように、テレビで突然発言したり、パーティーで酔っぱらって言ったり、世界最高権力の座にありながら無知な状態でしゃべったりすると、アウト。芸人でも、ネタだから許されることを祈りながら、扱い方には注意する。日本の芸風だと、突っ込みを添えることで「誤解」を防ぐ。週刊ポストも、極論に反論の記事を並列することもできたはず。もしくは、センセーショナルな文章に挑戦するなら、吹き出しで「失礼だろ!」、「言いすぎだよ!」「著者が怒(いか)っているんじゃないか!」などの突っ込みを加えるべきだったかも。次はぜひコラボレーションでもさせていただきたい。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

ニュース速報

ビジネス

EU、5G供給業者の厳格な選定で合意 ファーウェイ

ワールド

トランプ氏、香港法案巡り明言せず 武力弾圧阻止は「

ビジネス

米国株109ドル高、米中協議巡る発言好感 テスラさ

ビジネス

ドル上昇、好調な米経済指標受け=NY市場

MAGAZINE

特集:プラスチック・クライシス

2019-11・26号(11/19発売)

便利さばかりを追い求める人類が排出してきたプラスチックごみの「復讐劇」が始まった

人気ランキング

  • 1

    南洋の小国ツバル、中国に反旗 中華企業の人工島建設を拒絶、親台湾姿勢を堅持

  • 2

    表紙も偽物だった......韓国系アメリカ人高官が驚くような経歴詐称疑惑で辞任

  • 3

    韓国の「リトル東京」から日本人が消える?

  • 4

    息子の嫁を買うために母は娘を売る──児童婚犠牲者の…

  • 5

    香港高裁と北京政府が激突

  • 6

    「韓国に致命的な結果もたらす」文在寅を腰砕けにし…

  • 7

    「愚かな決定」「偏狭なミス」米専門家らが韓国批判…

  • 8

    「韓国は日本の従属物にさせられる」北朝鮮も民族の…

  • 9

    半分切除された脳は、結合を強めて失った機能を補う

  • 10

    中国はやはり香港人を拘束し拷問するのか──英領事館…

  • 1

    「愚かな決定」「偏狭なミス」米専門家らが韓国批判の大合唱

  • 2

    「韓国は腹立ちまぎれに自害した」アメリカから見たGSOMIA問題の本質

  • 3

    トランプが日本に突き付けた「思いやり予算」4倍の請求書

  • 4

    日本のノーベル賞受賞に思う、日本と韓国の教育の違い

  • 5

    表紙も偽物だった......韓国系アメリカ人高官が驚く…

  • 6

    中国は「ウイグル人絶滅計画」やり放題。なぜ誰も止…

  • 7

    香港の完全支配を目指す中国を、破滅的な展開が待っ…

  • 8

    米韓、在韓米軍駐留費巡る協議わずか1時間で決裂 今…

  • 9

    深い眠りによって脳内の老廃物が洗い流されているこ…

  • 10

    南洋の小国ツバル、中国に反旗 中華企業の人工島建設…

  • 1

    「愚かな決定」「偏狭なミス」米専門家らが韓国批判の大合唱

  • 2

    マクドナルドのハロウィン飾りに私刑のモチーフ?

  • 3

    「アメリカは韓国の味方をしない」日韓対立で米高官が圧迫

  • 4

    「韓国は腹立ちまぎれに自害した」アメリカから見たG…

  • 5

    GSOMIA失効と韓国の「右往左往」

  • 6

    意識がある? 培養された「ミニ脳」はすでに倫理の…

  • 7

    インドネシア、巨大ヘビから妻救出した夫、ブタ丸呑み…

  • 8

    トランプが日本に突き付けた「思いやり予算」4倍の請…

  • 9

    「武蔵小杉ざまあ」「ホームレス受け入れ拒否」に見る深…

  • 10

    アメリカが繰り返し「ウソ」を指摘......文在寅直轄…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!