コラム

盛り土は気になるけど、北方領土もね!

2016年09月29日(木)18時00分

 まず、武力も、経済的・外交的な圧力ももちろんその協力にしたって、ほとんどの手段は莫大なお金がかかるはず。そこでクエスチョン!

 Q: 北方領土返還のため、日本はいくらまで使っていいと思う?一人当たりの税金負担の額で答えてください。

 続きを読む前にまずは答えを出してくださいね。もちろん「一銭も払わない。日本の領土だから!」がまず思い浮かぶが、それはちょっと非現実的な極論かな。他にも考えましょう。

 たとえば、僕だったらこう答えるかも:

 A: "僕は500万円を払ってもいいよ。この連載が500年続けばそれぐらい稼げるし。"

 でも、他の人はこう答えるかも: 

 A: 一人当たり1千万円でも1億円でもかまわない。天然ガスなどの埋蔵資源が確認されているし、漁業権も大きな利益になるはず。すぐに元がとれるだろう!

 またこんな考えも:

 A: 払わない、というか払えない!現在「全国で900近くの市町村が消えそう」(*1)と言われている。そんな借金大国の日本が、ゼロから創生しなきゃいけない地方を新たに抱えてどうするんだ! 逆にロシアが払うんだったら、領土を譲ってもいい。

 こんな、多少厳しい意見も含めて健全な議論だ。読者の意見と異なるかもしれないが、それが考えを鍛えるチャンスだ。

 では、こんな質問はどうでしょうか?

 Q: ロシアがクリミア半島を併合したことを受けて、欧米や日本は経済制裁を科したり、G-8の首脳会議に参加させなかったりと、ロシアの孤立化を図ってきた。訪日させて会談を行うことだけでもその体制が崩れ始めるとも思われている。例えば、北方領土が返還されるために、クリミア半島の支配を事実上認めることになってもいい?

 ここで2つだけアンサーを挙げてみる。

 A: 構わない。クリミア半島は併合を望んでいるロシア系の住民がほとんどだ。侵略で奪われた北方領土と事情が全く違う。そして何より、遠い半島より近い四島を!「日本ファースト」で考えるべきだ。

 もうひとつは:

 A: だめ。力による国際情勢の現状変更を許し始めたらきりがないし、南シナ海、尖閣諸島、竹島などにおいて日本の主張の基となる国際法の根拠が薄れる。

【参考記事】ロシアで復活するスターリン崇拝

 次も、似た問題に関するクエスチョン:

 Q: プーチンの訪日、首脳会議にアメリカは難色を示しているが、日米関係への悪影響を気にする必要はある?

 それに対して、頭に思い浮かぶ答えはこの3つ:

 A: ない! サンフランシスコ平和条約の時点で北方領土の問題を残したのはアメリカだし、その問題を解決するためには独自路線でいく。

 それに:

 A: ある! 安倍首相が5月にソチでプーチンと対談したときも、ロシアの下院議員が「オバマの政策、失敗の証だ!」と喜びの声をあげた。北方領土の具体的な進歩がない段階でロシアのプロパガンダに使われ、オバマ大統領の面子をつぶすのは良くない。強い日米関係があってこそ交渉は捗るはず。

 または:

 A: あるけど、オバマにも秋田犬をあげればいいんじゃないの?

 ちょっと遊んでみたけど、こんな単純なやりとりでもいいから北方領土のディスカッションをしてほしい。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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