コラム

水がフレーバウォーターに! 脳を騙すカップ:ザ・ライトカップ

2017年02月01日(水)18時45分

<水道水やミネラルウォーターを、あたかもフレーバウォーターのように飲めるコップ。元々、糖尿病患者が、単なる水をできるだけ美味しく飲みたいとの思いから発案したものだ>

実は筆者の実家は菓子店だったこともあり、子どもの頃は、いわゆるソフトドリンクをよく飲んでいた(その一方で、ミルクもかなり好きだったが...)。今も自宅ではミルクを大量消費しつつ、なるべく余分な糖分を摂らないように、水道水をボトルに入れて持ち歩いたり、出先の自販機などで買う場合でもお茶系の飲料が多くなっている。

欧米では以前から普通のスーパーでも様々なウォーターボトルが販売され、健康意識の高さがうかがわれる一方、飲料メーカーも何とか「水+α」的な製品によって販売シェアを拡大しようと、様々なフレーバーウォーターを市場投入してきた。その流れは日本にも押し寄せてきており、今やコンビニなどで「水+ごく少量の果汁+香り」的な製品をよく見かけるようになった。

ご存知のように、糖分の摂りすぎは糖尿病などの病気の原因となる。加えて、自宅でもソフトドリンクやフレーバウォーターばかり飲んでいては不経済な面もある。そこで、水道水やミネラルウォーターを、あたかもフレーバウォーターのように飲めるコップとして考え出されたのが、ザ・ライトカップだ。

この製品は、元々、医者からソフトドリンク類の摂取を一切止められた糖尿病患者が、単なる水をできるだけ美味しく飲みたいとの思いから発案したもの。カラーパーツの部分にフルーツなどの香りと味が特殊な方法によって定着させてあり、嗅覚と味覚を通じて脳を「騙す」ことによって、フレーバーウォーターを飲んでいるような気にさせる。

本来、あらゆる知覚は、様々な情報の受容器を通じて得た刺激を、脳が特定の感覚として処理した、ある種の幻影に過ぎない。その意味でザ・ライトカップは、そうした生物的な人間の特性を巧みに利用したアナログ的なバーチャルリアリティともいえるだろう。

プロフィール

大谷和利

テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー、NPO法人MOSA副会長。アップル、テクノロジー、デザイン、自転車などを中心に執筆活動を行い、商品開発のコンサルティングも手がける。近著に「成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか」(現代ビジネスブック)「ICTことば辞典:250の重要キーワード」(共著・三省堂)、「東京モノ作りスペース巡り」(共著・カラーズ)。監修書に「ビジュアルシフト」(宣伝会議)。

今、あなたにオススメ

キーワード

ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「米国の和平案推し進める用意」、 欧

ビジネス

米CB消費者信頼感、11月は88.7に低下 雇用や

ワールド

ウクライナ首都に無人機・ミサイル攻撃、7人死亡 エ

ビジネス

米ベスト・バイ、通期予想を上方修正 年末商戦堅調で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story