コラム

経済政策は一切いらない

2021年11月10日(水)10時59分

コロナで弱ったのは、経済ではなく社会だ。

コロナのしわ寄せは、社会の弱いところに集中している。だから、その弱い社会を守る、直す、そこにいる人々を支援する。それに尽きるのだ。それは経済対策では実現できない。

政策にはコストと手間がかかるのだ。手間を惜しんでいるだけなのだ。

徹底的に、誰が弱っているのか、本当に困っているのか。100億円給付金を配るのなら、それを正確に見抜くためのコストを50億円でもかけないといけないのだ。わからないから150億円配るほうが早い、というのは根本的に間違っている。

150億円のうち、本当に困っている人に100億円届かない。薄くなる。ほとんどが困っていないのだ。コロナで困っているのは、最大見積もって1割だ。所得が変わらない人が7割。増えた人が1割。減った人は2割。私も収入が減った。しかし、それでも、生活に困るほどではない。ぜいたくができなくなっただけだ。減った人の半分はこのような人たちだ。本当に困っているのは1割だ。

さらに大きな問題は、精査するのは時間がかかる、面倒だ、そういっていたら、進歩しない。永遠にできないままだ。

苦労して、ノウハウを積み重ね、仕組みを作る必要がある。それで次には、少しずつスムースに行くようになるのだ。

金をもらって喜ぶな

なぜ、そういうまっとうなことをせずに、すぐにばら撒こうとするのか。

それは、経済のためでも、社会のためでもない。

選挙のためだ。

1割を救うよりも、9割に配ったほうが、有権者に広くいきわたる。そして、われわれがやった政策だと主張できる。みなさんのために働いています、がんばってます、と主張できる。

まるで、彼女の誕生日になって、彼女が本当に必要としているもの、彼女のことを何にも知らないことに気づき、お金を渡し、好きなものでも買って、というパパ活まがいの恋愛のようだ。

そして、その金をもらって喜ぶほうもどうかしている。

しかし、まあ、いつものことだ。

だが、しかし。私もそういってあきらめるのは良くない。政治にあきれてもあきれても、矢野次官のように闘う必要がある。主張し続ける、真実を叫び続ける必要がある。

問題なのは、それを選挙対策と知りながら、サポートするエコノミスト、評論家、有識者たちだ。景気にマイナスでないんだから、選挙対策でもいいじゃん、そういうことだ。

これでは、日本は永久に良くならない。

私は、このような有識者、メディアと闘い続ける。

*この記事は「小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記」からの転載です

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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