コラム

異次元緩和からの「出口」をどう想定すべきか

2017年04月10日(月)14時00分

完全雇用達成後の日本経済の名目経済成長率が3%であるとすれば、日本の長期名目金利も、相当な時間は要するにせよ、最終的には3%程度まで上昇することになる。というのは、金利をそこまで上昇させないと、投資が貯蓄を上回り続け、インフレ率が目標である2%を超えて加速してしまうからである。日銀がそのように長期金利を3%程度まで引き上げるためには、保有国債の売却によって、それが実現されるところまでベースマネーを縮小し、バランスシートを圧縮しなければならない。

上述のように、通常のテーパリングでは、中央銀行が金利引き上げのために、まずはバランスシートを縮小させる。それに対して、ここでは、金利の引き上げの結果としてバランスシートの縮小というテーパリングが自動的に実現される。それは単に、異なるルートから同じゴールに向かったというにすぎない。

バランスシートを拡大させたままでも問題はない

他方で、金融市場の状況によっては、日銀バランスシートのそれほどの縮小がなくても、長期金利の引き上げが実現される可能性も十分にある。それはたとえば、金融機関が何らかの理由で長期国債の保有を忌避し始めたような場合である。あるいは、短期金融市場と国債市場が分断されており、長期国債の若干の売りオペのみで容易に長期金利の引き上げが実現できてしまうような場合である。それらが当てはまるとすれば、長期国債市場には既に十分な金利上昇圧力が生じているはずであるから、日銀が長期金利の引き上げのために大量の国債売却を行う必要はない。

こうした場合、日銀はむしろ、異次元緩和によって拡大したバランスシートを維持し続けることが必要になる。日銀は単に、その状態を許容すればよく、バランスシートの圧縮を意図的に試みる必要はない。というのは、バランスシートの維持によって問題が生じることは何もないからである。

そもそも、テーパリングあるいは量的緩和からの出口の第一義的な目的は、金利を適切な水準に引き上げることによって、インフレ率の加速を抑制することである。日銀が国債の売却をそれほど行わなくても長期金利が上昇していくのであれば、日銀にとってはむしろ、わずかな労力で目的を達成できることになる。金融政策の最終的な目標は、物価や雇用といったマクロ経済状況の安定化であって、中央銀行バランスシートの適正化ではないのである。

プロフィール

野口旭

1958年生まれ。東京大学経済学部卒業。
同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。専修大学助教授等を経て、1997年から専修大学経済学部教授。専門は国際経済、マクロ経済、経済政策。『エコノミストたちの歪んだ水晶玉』(東洋経済新報社)、『グローバル経済を学ぶ』(ちくま新書)、『経済政策形成の研究』(編著、ナカニシヤ出版)、『世界は危機を克服する―ケインズ主義2.0』(東洋経済新報社)、『アベノミクスが変えた日本経済』 (ちくま新書)、など著書多数。

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