コラム

トランプはなぜあれほど強かったのか──経済政策でもたらした最大のインパクトとは

2020年11月24日(火)18時15分

トランプ政権の経済政策は、財政赤字に対するアメリカ人の常識を覆した...... REUTERS/Tom Brenner

<アメリカの有権者の多くは、トランプの「人格」に対しては眉をひそめていたにしても、少なくともトランプ政権の経済的な実績に関しては一定の評価を与えていた。トランプが経済政策面でもたらした最大のインパクトとは......>

現職の共和党候補トランプと民主党候補ジョー・バイデンとの間で争われた2020年の大統領選は、バイデンの勝利で終わり、トランプ政権は1期4年でその幕を閉じることになった。トランプの再選が叶わなかった最大の敗因は、明らかに、2020年から始まったコロナ禍にあった。トランプ政権は感染拡大の初期段階から、新型コロナの感染拡大を軽視し、積極的な防疫の必要性を否定し続けた。その結果、感染者数と死者数の双方において、アメリカは世界最悪の感染国になってしまったのである。

トランプ政権のこのような大失策にもかかわらず、この大統領選は他方で、トランプに対する岩盤支持層の拡がりを改めて印象付ける結果となった。というのは、トランプは前回2016年選挙を大きく上回って、バイデンに次ぐ史上2位となる7400万票もの投票総数を獲得したからである。トランプが前回の2016年大統領選では勝利していながら今回は敗北した州は、いずれも僅差であった。

仮に世界が2020年にコロナ禍に襲われることさえなければ、トランプは確実に大統領に再選されていたように思われる。というのは、アメリカの有権者の多くは、確かにトランプの「人格」に対しては眉をひそめていたにしても、少なくともトランプ政権の経済的な実績に関しては一定の評価を与えていたからである。

そのことを最もよく示していたのは、2020年10月に公表されたギャラップの世論調査「2020大統領選概観」である。それによれば、「4年前よりも今の方が暮らし向きは良い」と回答したアメリカ人は、56%にも及んだ。これは、オバマ(2012年、45%)、ブッシュ(2004年、47%)、レーガン(1984年、44%)といった歴代大統領の再選時の数字を大きく上回っている。また、「大統領としてどちらに適性があるか」との問いにはバイデン49%、トランプ44%であったが、「どちらの政策に同意するか」の問いではトランプ49%、バイデン46%と、評価がまったく逆転していた。

このような世論調査レベルでのトランプ政権の政策に対する高い支持は、決して驚くにはあたらない。というのは、少なくともその数字上の実績から評価すれば、トランプ政権は確かに、「アメリカ国民の雇用の拡大」という、当初から最優先のものとして掲げていた政策目標を十分に達成していたといえるからである。

コロナ禍が顕在化する直前の2020年1月時点では、アメリカの就業者数はトランプ政権下で約700万人増加し、失業率は3.5%という、アメリカ経済の黄金時代であった1960年代末以来の水準にまで改善していた。アメリカはトランプ政権の最初の3年間で、歴史上稀に見る「高雇用経済」を実現していたのである。

プロフィール

野口旭

1958年生まれ。東京大学経済学部卒業。
同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。専修大学助教授等を経て、1997年から専修大学経済学部教授。専門は国際経済、マクロ経済、経済政策。『エコノミストたちの歪んだ水晶玉』(東洋経済新報社)、『グローバル経済を学ぶ』(ちくま新書)、『経済政策形成の研究』(編著、ナカニシヤ出版)、『世界は危機を克服する―ケインズ主義2.0』(東洋経済新報社)、『アベノミクスが変えた日本経済』 (ちくま新書)、など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

再送-米ミネソタ州での移民取り締まり、停止申し立て

ワールド

移民取り締まり抗議デモ、米連邦政府は原則不介入へ=

ビジネス

アングル:中国「二線都市」が高級ブランドの最前線に

ワールド

焦点:トランプ氏のミサイル防衛構想、1年経ても進展
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 4
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 5
    「着てない妻」をSNSに...ベッカム長男の豪遊投稿に…
  • 6
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタ…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 6
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story