コラム

中国出身テロリストがシリア軍幹部に抜擢──それでも各国が黙認する理由

2025年05月26日(月)17時45分

シリアでは2011年初頭、強権的なアサド政権に対する民主化運動が広がり、これを軍が鎮圧するなかで内戦に発展した。混乱に乗じてアルカイダ系組織が流入し、それがさらに分裂して2014年にはイスラーム国(IS)が誕生した。

アルカイダ系も外国人中心だったが、ISはさらに世界中に参加を募り、最盛期には約3万人がシリアに渡航したといわれる。


ザヒードはこうした外国人戦闘員の一人で、2012年にそれまで拠点にしていたアフガニスタンからシリアに渡ったといわれる。


シリアを制圧した過激派

外国人戦闘員の多くは2015年以降シリアを離れた。ロシアの支援を受けたアサド政権が、反政府勢力の占領地の多くを奪還したからだ。

ところが、それでも一部の外国人戦闘員はシリアにとどまり、北西部イドリブ周辺を支配し続けた。

転機は昨年12月だった。イスラーム過激派タハリール・アル・シャーム機構(HTS)を中核とする反政府連合が首都ダマスカスを攻略し、アサド政権はもろくも崩壊したのだ。

HTSを率い、その後暫定大統領に就任したアル・シャラ自身サウジアラビア出身で、アルカイダ系組織の一員だった経歴の持ち主でもある。そのためアル・シャラの周囲には内戦時代からの外国人戦闘員が多い。

このなかでザヒードを含むウイグル人は、中央アジア出身者とともにアル・シャラの警備を担ってきたといわれる。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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